第101回全国高校野球選手権高知大会の第2日が7月14日、高知市の県立春野球場と高知市営球場であり、1回戦計6試合が行われた。
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県立春野の第1試合は、高知西が二回と四回に打者一巡の猛攻で得点を重ね、宿毛・幡多農にコールド勝ちした。第2試合は、安芸が延長十一回に小松、伊藤の適時打で2点を勝ち越し、高知海洋・高岡・丸の内・室戸に競り勝った。第3試合では、高知東の打線がつながり11得点で追手前を下した。
高知市営の第1試合は、須崎総合が中盤の好機を逃さず、伊野商に逆転勝ち。第2試合では、高知工が宿毛工の守備の乱れを突き、勝利した。第3試合は、土佐が高知南との投手戦を制した。
部員1人、監督と二人三脚 高知海洋・高岡・丸の内・室戸 関選手
高岡の関康太(3年)は、たった一人の野球部員として1年生の時から練習に励んできた。高岡は今大会、4年ぶりに連合チームとして参加した。この日の試合は、高校から野球を始めた関にとって初めて挑む公式戦になった。
「1週間でやめると思っていたが、よくがんばった」
高知県高校野球連盟会長で同校校長の田頭克文(60)は振り返る。
2年前の入学後に関が休部状態だった野球部に入部して以降、今も部員は一人のままだ。選手として中村で選抜準優勝の経験がある田頭が監督を引き受け、2人だけの練習を続けてきた。
中学時代は不登校。「なんとなく行きたくなくなって」。昼間に起き出してゲームをしたり、本を読んだりする日々。漠然とした不安を振り払えずにいた。
自分を変えるため、高校ではスポーツを始めようと決めた。
選んだのは野球部。幼い頃キャッチボールが好きだった。ルールはゲームで知っている程度。初心者でチームの足を引っ張りたくなかったから、部員がいない方が都合が良かった。
週5日の練習は一度も休まなかった。当初はキャッチボールが中心だったが、上達とともに徐々にメニューが増えていった。バットに当てることができなかった打撃も、鋭い打球を飛ばせるまでになった。いつか試合に出てみたい、と思い始めた。
地道な練習を積み重ねて、田頭は今春、関に試合に出られる力がついたと判断し、尋ねた。「試合、出るか」。「出たいです」。即答だった。
高知海洋、丸の内、室戸と連合チームを組み、5月から合同練習に参加。外野からの中継プレーや実戦形式での走塁練習を初めて体験した。苦戦したが、仲間が丁寧に教えてくれた。それまで人付き合いは苦手だったが、チームプレーを経験し、仲間と支え合う野球の楽しさを知った。
開幕を控えた7月上旬、関はグラウンドの片隅で、田頭に教わりながら開会式に向けて入場行進の練習を繰り返し、初の公式戦に向けての準備を整えた。
安芸との試合は九回まで2対2で延長戦に突入する緊迫の展開になった。背番号「13」の関には出場機会は巡ってこなかったが、「大丈夫」「いけるぞ」と最後までベンチから声をかけ続けた。チームは十一回表に2点を追加され、敗れた。
試合後、球場の外で田頭の顔を見た関は、地面に泣き崩れた。田頭は背中をポンとたたき、「試合には出られなかったけど、君の3年間は僕が全部見てきたから」と言った。関は無言でうなずいた。=敬称略(加藤秀彬)