スウェーデン・アカデミーは北京時間10月8日、2020年のノーベル文学賞を米国の詩人、ルイーズ・グリュックさんに授与すると発表した。スウェーデン・アカデミーは、受賞理由について、グリュックさんの詩には「個人の存在を普遍的にする厳格な美しさがある」と評価した。中国新聞網が報じた。
9日早朝、中国では「文学賞と並走続ける村上春樹」というハッシュタグの検索が急増した。「村上春樹が再びノーベル文学賞受賞を逃した」と肩を落とすネットユーザーのほか、村上春樹の作品に出てくる名セリフを投稿してシェアするネットユーザーもいた。
また、「村上春樹は一体いつノーベル文学賞を受賞できるのか」や「村上春樹が受賞できる可能性はどれくらいあるのか?」などの議論も生じている。
文学賞と「並走」する村上春樹
ここ数年、日本の小説家・村上春樹は、ノーベル文学賞の候補にずっと上がっているものの、受賞には至っていない。そのため、「村上春樹は永遠にノーベル文学賞と並走」と揶揄するコメントもある。
村上春樹は2006年に、多数のノーベル賞作家が受賞したフランツ・カフカ賞を受賞。その後は、英国ブックメーカーなどでは毎年必ずノーベル文学賞の有力候補の一人に挙げられてきた。しかし、村上春樹本人は、「自分が小説を書く原動力は賞ではなく、読者からもらっている」と述べている。
ノーベル文学賞と「無縁」な著名作家は村上春樹だけではない。あるメディアの統計によると、過去100年、レフ・トルストイやヘンリック・イプセン、フランツ・カフカ、アントン・チェーホフなど、たくさんの文学界の巨匠がノーベル文学賞を逃している。
著名な文学評論家・白燁氏は、「私の観察では、読者が期待すればするほど、スウェーデン・アカデミーの検討対象から外される。そのため、呼び声高い作家ほど、ノーベル文学賞を受賞することが難しい」と分析する。
そして、「村上春樹の作品は芸術的幅がとても広い。高尚な作品もあれば、大衆向きの作品もある。「ノルウェイの森」などの作品は既に流行文学の名作となっている。村上春樹がノーベル文学賞を受賞できなくても、読者の心の中での彼の位置付けが変わることはない」との見方を示す。
村上春樹が受賞する可能性は?
「並走」のほか、「村上春樹が受賞できる可能性はどれくらいあるのか?」というのも大きな話題となっている。
ノーベル文学賞は、「シリアス文学」作品が受賞する傾向が強く、「村上春樹の作品は大衆向きであるため、ノーベル文学賞受賞の可能性は低い」という見方もある。
一方、村上春樹の複数の作品を翻訳してきた翻訳家の林少華氏は、「村上春樹がノーベル文学賞を受賞する可能性は非常に大きい。その作品は、一般的な意味での大衆向き文学ではなく、知性、美的理念を追求した『純文学』だ」との見方を示す。
村上春樹がノーベル文学賞を受賞できない原因は、翻訳にもあるのかもしれない。林少華氏は、「村上春樹の小説の物語はとてもおもしろい。しかし、言葉ではなかなか言い表すことができない文体の味わいは、物語より魅力があるかもしれない」とし、「あの種の微妙な味わいは、英語訳では十分に伝わっていないのかもしれない。それも、村上春樹が受賞に至らない原因の一つかもしれない」と分析している。(編集KN)
「人民網日本語版」2020年10月12日