中国の高速鉄道の総延長が3万5000キロメートルを突破し、世界の高速鉄道全体に占める割合が3分の2以上になった。人々の移動がよりスムーズで便利になっている。しかしそれと同時に、全国の81組の往復列車は依然として従来のような鈍行列車で、乗車料金が安く、各駅停車し、過疎地の山間部を走っている。(文/人民日報海外版・厳氷、朱春宇)
四川省広元市と陝西省宝鶏市を結ぶ6063/6064号列車は、そんな公益「スロー列車」だ。その60年以上にわたって、その存在を通じて村人を豊かにし、子供たちの通学手段となってきた。
早朝の広元駅の改札口で、多くの村人が籠を背負い、野菜籠を手に提げて、早くから列を作り改札が開くのを待っていた。背中の籠が空なのは列車で仕入れに行く人たち。籠をいっぱいにしているのは、市場に商品を売りに行く人たちだ。
公益「スロー列車」で、家で育てた鶏を入れた籠を背負い売りに行く女性(撮影・万邵愉/写真著作権は人民図片が所有のため転載禁止)。
山間部の農産品を都市部に向けて売るのは、貧困を脱却し豊かになるための重要な手段だ。李さん(女性)は四川省広元の人で、陝西省の燕子砭鎮まで桃を仕入れに行く。李さんは、「500グラム1.3元(1元は約15.9円)で仕入れた桃が、広元に戻ると500グラム2元で売れる。この列車が走るようになってから、小さな商売をして家の出費を賄うことができるようになり、生活もだんだん楽になった」と笑顔で語る。
王さん(男性)は、自立できるのはすべてこの列車のおかげと誇らしそうに話す。王さんは、「広元から燕子砭までの乗車料金はたったの4元。おかげで一気に利益が出るようになった。この列車が廃止にならなかったのは貧困支援のため。私たちのことを気遣ってくれる鉄道は素晴らしい」と笑顔で語る。
貧困地区の児童に良好な教育を受けさせることも、貧困支援開発の重要任務だ。ある車両の中を見渡すと、通学する児童と保護者ばかりだった。乗務員の任斌さんは、「11駅の周辺に24校がある。これは沿線の児童向けの通学車両だ」と説明した。
公益「スロー列車」で帰宅中、宿題に取り組む児童ら(撮影・黒興友/写真著作権は人民図片が所有のため転載禁止)。
友人同士の劉森さん、王義博さん、馬文豪さんは、略陽県白水江鎮に住んでおり、県都の嘉陵小学校に通っている。馬さんの祖母によると、同郷であり寮のルームメイトでもある3人は、毎週一緒に乗車して学校に行き、また一緒に列車に乗って帰宅している。家事が忙しい時には、馬さんの祖母も多くの保護者と同じように、子供たちを乗務員に任せるのだという。
こうして、日々走り続ける「庶民の列車」は沿線の村人に希望のある日々をもたらし、また「人民のための人民鉄道」という変わらぬ約束を守り続けている。車掌の劉連瑞さんは近年、村人たちの暮らしが着々と改善されるのを目にしてきた。
四川省広元市と陝西省宝鶏市の間の秦嶺山区の村々を結んで走る宝成鉄道(撮影・唐振江/写真著作権は人民図片が所有のため転載禁止)。
「まずは着ている服が良くなった。特に冬、村人たちはみな厚手のいいものを着られるようになった。次に、多くの村人がスマートフォンを使い、微信支付(WeChatペイ)を使っている。さらに、居住条件が以前より大幅に改善された」と言いながら、劉さんは窓の外を指さした。
燕子砭駅を過ぎると、山に囲まれた小さな盆地が増える。近くには緑が生い茂る畑があり、遠くには真っ白に塗られた2階建ての農家が並ぶ。どの家の赤い屋根の上にも、太陽熱温水器が設置されている。そしてどの家の前にもコンクリートの道路が敷かれている。
6063/6064号列車は線路をゆっくりと走る。貧困脱却の難関攻略の道のりを、列車は村人を一人も置き去りにすることなく乗せて、前進していく。(編集YF)
「人民網日本語版」2020年11月12日