モバイル機器や情報家電が普及し、だれもが簡単に操作できるIT環境を設計できる技術者の育成が叫ばれている。東京農工大学は、大学院に「ユビキタス&ユニバーサル情報環境の設計技術者養成」コースを新設、大学院での情報教育のあり方を探りながら、5年間のプロジェクトとして人材養成に取り組むことになった。文部科学省「科学技術振興調整費・新興分野人材養成」として採択された。12月、学生を募集する。 新設するのは「情報工学専修」「ユビキタス&ユニバーサル情報環境専修」の2コースで、「ヒューマンインターフェース技術」「メディア処理技術」「ソフトウエア基本技術」「基盤情報システム技術」の4つの科目群を設定し、各群にひとつずつ必修の演習を課す。 これまで技術者教育は研究を深めることが中心で、実生活で役立つかどうかにはあまり目が注がれてこなかった。同大では、専門技術を横断的に結びつけ、利用者の視点に立ったユニバーサルなシステムを構築できる人材が不足していると考え、養成コースの設置を決めた。企業で求められる分野を横断した“ものづくり”の力を身につけることがねらいだ。 企業のソリューション部門の担当者や、ユーザー・インターフェースの研究者らを客員教授に招き、社会的ニーズの高いテーマを設定してプロジェクト研究を行う。また、協力企業を募って3~6カ月間、学生が企業で実習を行うインターン制度も取り入れる。 大学の授業では、一般原理や方法論を学び、その後に演習を行うことが効果的と考えられてきたが、同大では学生に問題意識を持たせるため、講義と演習を逆転し、1年次に演習とインターンを行い、2年次は講義中心のカリキュラムのほか、実際に学内の教育システムを設計することも計画している。実際に学内システムを設計することで、設計して利用者の評価を聞き、修正していく企業のシステム構築の流れをトレーニングできると同大では考えている。 同大の中川正樹教授は「スキルなしに学んでも得るものは少ないので、まず演習を課す方法にした。企業で現実の問題を認識してから講義を受けると、学習意欲も高まる」と話す。また、インターン中の学生や社会人学生が学習しやすいように、3年後を目標にeラーニングシステムを構築し、対話型とウェブセミナーを組み合わせた教材を準備することにしている。 プロジェクトの特任教授に就任した元富士通研究所の藤田孝弥教授は「企業で求められるのは、部署を横断するソリューション力。専門を深めるばかりではなく、若いときから横を見るトレーニングが必要だ」と話し、新しい技術を取り入れて、新しいシステムを作りだす人材育成を目指したいとしている。 学生募集は12月5日から。来春の大卒見込み者、社会人などが対象で、社会人選抜は科目試験を免除し、面接のみで合否を決める。募集の詳細はホームページを参照。【岡礼子】 ユビキタス&ユニバーサル情報環境専修 |
東京農工大:ユビキタス社会の情報技術者を育成
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