○NTT西日本2-0ホンダ●
NTT西日本が逃げ切った。一回、脇谷の右前打と四球で無死一、二塁とし2死後、西田が一塁強襲の適時打を放ち、1点を先制。八回、宮崎の犠飛で加点した。左腕・笠木は130キロ台後半の直球の切れがよく、ホンダ打線を2安打無得点に抑えた。ホンダは、先発の大田、2番手・ランドルが好投したが、打線が沈黙。三塁すら踏めなかった。
▽NTT西日本・村本忠秀監督 関東のチームに勝ちたいと、試行錯誤してきて結果が出た。笠木がよく投げ、八回の犠牲フライも大きかった。
▽ホンダ・宇田川丈昌監督 打てないなら打てないなりに、昨日までは犠打やエンドランなどを使ったが、それも出来なかった。完敗です。
◇「初回から死ぬ気で投げた」…笠木
一回から七回まで、わずか被安打1。快調な投球を続けながらも、NTT西日本・笠木の脳裏には、悪い記憶ばかりがよみがえっていた。逆転サヨナラ本塁打を浴びた昨年の都市対抗代表決定戦、敗戦投手となった昨年の日本選手権準決勝、そして五回途中でKOされた今大会の2回戦……。「『この回は抑えたけれど、次の回は打たれるんじゃないか』と想像したりした」という。
八回、悪夢は現実になりかけた。先頭打者に与えた四球がきっかけで1死一、二塁のピンチ。ナインや村本監督がマウンドに集まる。しかし、笠木に降板する気は毛頭なかった。これ以上、嫌な思い出を増やすのはごめんだ。悪夢は自分の力で振り払うしかない。
気力十分の顔を見て、監督は続投を決めた。笠木のボールに、改めて力が満ちてきた。次打者を空振り三振にとり、続く早川は投ゴロ。打球を捕った瞬間、笠木は心の中で叫んだ。「オレの勝ちや!」。
最終回も無事に切り抜けて完封勝利。笠木には、喜びよりも安どの気持ちが強かった。「初回から死ぬ気で投げた。気持ちの抜けたボールは1球も無い。とにかく勝ちたかった」。智弁和歌山高時代、94年センバツの優勝投手だが、感激は今回の優勝戦進出の方が上だと言う。「社会人になって、多くの負けを知りましたからね。その分、うれしいんですよ」【神保忠弘】
○…ホンダ打線が完ぺきに抑えられた。狙い球を絞り切れず、三塁を踏めなかった。主将の岡野勝は「変化球を狙っていたら直球で押してきた。直球に狙いを変えると、変化球でかわされた。捕手に読まれていた」と、完敗を認めた。岡野勝は五回と八回の無死一塁から2度、送りバントを失敗し、「バットを引いた形でバントをしてしまった。ミスが出ると勝てません」と落胆した表情だった。内野安打1本のまま迎えた九回、初めて外野への左前打を放った上田こう(だ)は、「つなぐことだけを考えて打った。遅かったですね」とつぶやいた。
毎日新聞 2005年11月26日 20時21分 (最終更新時間 11月26日 20時24分)