Q 少子高齢化に対応する社会保障政策に関して、候補の論戦はどうなっているのかな。
A 年金について、安倍晋三官房長官はパートに厚生年金を適用するよう主張している。谷垣禎一財務相は児童手当と税控除を組み合わせた「子宝税制」を掲げ、麻生太郎外相は「シルバーとの共生」を訴えている。大枠はみんな、財源を保険料中心に税で補う現行の社会保険方式を踏襲する考えだ。
Q ほかの主張はないの。
A 出馬に意欲を持つ河野太郎衆院議員は、基礎年金財源を全額税でまかなう「税方式」を主張しているよ。
Q 厚生年金の対象拡大は、04年の年金改革で厚生労働省が試みて失敗したのでは。
A パートを多く抱えるスーパーや外食産業が事業主分の保険料負担を嫌い、猛反発したからね。景気が回復しつつあるとはいえ、厚労省は「もうちょっと先の課題」とみている。
Q 谷垣氏は10年代の半ばまでに消費税率を10%にして、全額を社会保障目的税化すると言っているね。
A 社会保障費の安定財源を示し、国民の不安を払しょくする考えのようだ。あえて増税を打ち出したことがどう評価されるか注目されるが、論議の起爆剤となったことは確かだ。09年度に基礎年金の国庫負担割合(現行3分の1)を2分の1に引き上げる政府方針には約2・5兆円が必要で、増税が不可欠だという見方が政府・与党には強いからね。
Q 少子化対策は
A 05年は1人の女性が一生に産む子ども数に相当する、合計特殊出生率が1・25にまで下がった。児童手当などの経済的支援を重視するか、それとも働き方を見直し男性も子育てに参加する社会作りに力点を置くのか。政府内でも論争になっているほどだ。
Q どちらが正解なんだろう。
A「家族観」など哲学が問われる問題でもあり、各候補は理念を明確にすべきだね。
Q 「経済的支援」と言っても財源はいるよね。
A 消費税も「打ち出の小づち」じゃない。介護保険の保険料徴収年齢(現行40歳以上)を広げる議論にあわせ、保険料を財源に子育て世代に給付をする育児保険を真剣に検討するのも一考だ。子育てを終えた人や、子どもを産むつもりのない人は掛け捨てになるという批判はあるけれど、国民に真正面から問う時期に来ているんじゃないかな。【吉田啓志】
毎日新聞 2006年8月2日