【シドニー=高橋香織】オーストラリアのアボット首相は8日、与党議員が提出した党首交代の是非を問う動議を巡り、臨時の党議員総会を9日に開くことを決めた。議員総会は火曜日に開催するのが定例で10日に予定されていたが、党内分裂に早期幕引きを図るため1日前倒しする。首相は動議の否決に自信を示しており、1日も早い事態収拾を目指すが、直前の日程変更が党内の求心力低下につながる恐れもある。
アボット首相は8日、記者団に議員総会を9日午前9時(日本時間同7時)に開くと述べた。同日の連邦議会招集を控え、開会前に決着をつける構え。アボット首相は記者会見で「不安定さと不確かさは、我が国にとって最も不要なものだ。一刻も早くカタをつける」との声明を読み上げた。日本をはじめ、豪州の主要な貿易相手国に対し、政権の不安定さを印象づけたくないとの計算が働いたとみられる。
ホッキー財務相をはじめ、主要閣僚はそろって党首交代の是非を問う動議への反対を表明している。しかし、日程の変更を事前に知らされていなかった一部の議員からは「こうなれば指導部の信任を問うべきだ」と動議に賛成する声も上がっている。
新党首の最有力候補とされるターンブル通信相は「閣僚として首相を支持するのは当然」として首相への忠誠を示す一方、アボット首相が党首の地位から追い落とされた場合、自らが党首選に立つかどうかは明言を避けた。ターンブル氏は2009年、自由党が野党時代に行われた党首選で、アボット氏に1票差で敗れている。
9日の議員総会では、党首のアボット首相と副党首のビショップ外相の交代を求める動議に賛成するかどうか、無記名で投票する。過半数が賛成票を投じれば、ただちに党首選に移るとみられる。
豪州の連邦議会は下院と上院から成り、下院で過半数を獲得した政党の党首が首相に任命される。首相の任期は3年で、最低2期務めるのが慣例。自由党党首のアボット首相は2013年9月の総選挙で労働党から政権を奪回し、国民党と連立政権を組んでいる。