アサヒビールは13日、ワイン販売大手のエノテカを買収すると発表した。3月末に投資ファンドなどから全株式を買い取る。買収額は非公表。国内のアルコール飲料の市場縮小が続くなか、成長分野のワインをてこ入れする。中高価格帯のワインに強いエノテカのノウハウや販売網を生かし、ワイン3位のアサヒはメルシャン、サントリーワインインターナショナルの2強を追撃する。
ユニゾン・キャピタル(東京・千代田)系のファンドなどと全株式を譲り受ける契約を13日付で結んだ。3月31日に完全子会社にする。エノテカの経営陣は4月1日付で広瀬恭久社長が会長となり、桜井裕之常務執行役員が社長に昇格。アサヒからは平野伸一専務を副会長として送り込む。
エノテカは欧州などからワインを輸入。飲食店などに卸すほか、自前の店舗やインターネット通販でも販売している。海外の有力生産者との太いパイプを生かし、1本数千~数万円の高品質のワインを数多く調達できるのが強みだ。扱うワインは1千種類を超え、首都圏の商業ビルなど好立地に48店を展開し、海外でも韓国やシンガポールなど16店を持つ。
2014年3月期のエノテカの売上高は173億円。15年3月期は200億円を見込む。14年12月期で売上高が144億円だったアサヒのワイン事業はエノテカとの単純合算で2倍以上の規模に拡大する。
アサヒの小路明善社長は13日の記者会見で「販売力に加え、生産者と強固な信頼関係を築いている」とエノテカを強調。東京都心部の再開発などを踏まえ、国内出店を加速。4年後には店舗網を100店規模に広げ、アサヒの物流網を生かしたコスト低減など営業面での連携も進める。
消費者の嗜好が多様化し、国内のワイン市場は拡大が続く。南米産などの価格の安いワインの輸入が増え、ビールなどに代わる食中酒として需要が拡大。13年の課税出荷量は12年比3.2%増の約35.4万キロリットルとなり、14、15年も4~5%の伸びが見込まれている。
国内ワイン市場では現在、メルシャンとサントリーワインインターナショナルが2強となり、アサヒは大きく水をあけられている。エノテカの買収を契機に手薄だった中高価格帯の品ぞろえを増やし、2強を追撃する。
アサヒは14年12月に老舗の料亭、なだ万(東京・新宿)を買収。エノテカも「なだ万と同様、百貨店などとの結びつきが強い」と評価する。シェア首位の本業、ビールでも高級商品「ドライプレミアム」の販売に力を入れており、グループとしての高級路線を鮮明に打ち出す。