智弁和歌山―東海大相模 四回表智弁和歌山2死二塁、神先は右前適時打を放つ。捕手佐藤=加藤諒撮影
(3日、選抜高校野球 智弁和歌山12―10東海大相模)
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走者が出れば、智弁和歌山の得点のにおいがぷんぷん漂ってくる。
6―10の八回も、1死から連打であっという間に甲子園にその雰囲気が立ちこめてきた。2死二、三塁で注目の強打者、3番林が力感のある構えからフルスイング。打球は詰まったのに右翼フェンスを直撃した。2点適時打。大歓声だ。連続四球でさらに満塁。「打ってかえせる自信があった」と黒川が初球を中前に運んで同点にした。
乱打戦は智弁和歌山の野球に思える。しかし、高嶋監督は「うちは守りのチーム」。先行して守り切る展開を理想に掲げる。選手も決して乱打戦は望んでいない。ただ、「守りのミスが出れば打ってかえす」と黒川は言い切る。それが、このチームの伝統だ。
一回、いきなり4点を奪われたが四回に逆転した。五回には逆転2ランを浴び、六回には一塁手の文元、三塁手の林が続けて悪送球するなど、さらに4失点。「かなりへこんだ」と林。でも、仲間から「声を出せ」と怒られ、気持ちを切り替えた。
ベンチの前で、ぐっと腕組みをして仁王立ちする高嶋監督も後押しする。前日は「対策なんてない。正面から向かうしかない」ときっぱり言った。この日は試合中盤に「投手の球も配球も見ただろ。もうぼちぼち行けや」。選手は堂々とバットを振るだけだ。
「延長十回は波が押し寄せてきた。それに乗っかった」と監督。安打と四球で相手に圧力をかけた後の2得点で押し切った。チームにとって不本意でも、「強打の智弁和歌山」が今大会も完全に出来上がった。(坂名信行)