【ワシントン=芦塚智子】クラッパー米国家情報長官は26日、上院軍事委員会の証言で「イスラム国」などイスラム教スンニ派の過激派武装組織について「グループやメンバー、拠点の数が史上最大になっている」と警告した。その一方でサイバー攻撃を米国の安全保障や経済に対する「第1の脅威」に挙げた。
米上院軍事委員会の公聴会で証言するクラッパー国家情報長官(26日、ワシントン)=AP
米情報機関がまとめた世界の脅威に関する評価報告について書面と口頭で議会証言した。「過激派の脅威は高まる可能性が高い」とした。そのうえで、脅威の度合いは過激派武装組織がイラクやシリアの支配地域を拡大・維持できるかどうかや、米国主導の有志国連合の連携などに左右されると分析した。
2014年1~9月に世界で起きたテロの件数は約1万3千件、死者は約3万1千人に上ったとする推計も示した。14年全体のテロ犠牲者数は記録がある過去45年で最悪の水準になるとの見通しも明らかにした。イスラム国による攻撃が最も多く、半数がイラク、アフガニスタン、パキスタンで起きたと説明した。
この推計は米メリーランド大学の統計を基にしている。13年の件数は約1万1500件、死者は約2万2千人だった。
長官は、イスラム国対策の情報共有などで中東諸国が協力の姿勢を強めていると評価。ただ、トルコは「優先事項や関心が異なると思う」とし、積極的な関与は期待できないとの見方を表明した。イスラム国の外国人戦闘員の約60%がトルコを経由してシリアに入国していると述べた。
サイバー攻撃については頻度や規模、洗練度などいずれも脅威が増しているとした。特にロシアによるサイバー攻撃の脅威は「我々が以前評価していたよりも深刻だ」と語り、評価報告の中で初めて中国よりも上位に記載した。
一方、米国のインフラに壊滅的な影響を与えるような大規模なサイバー攻撃の可能性は低いとも指摘。様々な発信源からの小・中規模の攻撃が続き、米国の経済競争力や安全保障に累積的な損害を与えることが懸念されるとした。