経営権を巡って会長と社長が対立していた大塚家具は27日、東京・江東の本社で定時株主総会を開いた。会社が提案した大塚久美子社長らの取締役選任案を可決した。大塚家を除く株主の８割から信任を得た久美子氏は総会後の取締役会で社長続投が決まり、久美子氏の父で創業者の勝久氏は会長を退任した。株式の約18％を持つ勝久氏は筆頭株主として残るため、父と娘の対立の構図は今後も続く。

株主総会後、記者会見する大塚家具の大塚久美子社長（27日午後、東京都江東区）

委任状争奪戦にまで発展した「親子げんか」は一躍注目の的となり、今回の株主総会は出席者が前年の10倍の約200人に膨らんだ。午前10時に始まった総会では冒頭、自身を含む取締役の選任案を株主提案した勝久氏が「（久美子氏の）クーデターにより、社長の座を奪われた」と主張。久美子氏は勝久氏を取締役から外す会社提案に「ガバナンスの改善が重要」と理解を求めた。

株主との質疑応答では「騒動の原因と再発防止策をどう考えるか」「会社は（大塚）一族のものではない」など苦言が続出。勝久氏をいさめる株主の発言に久美子氏が涙ぐむ場面もあった。

接戦が予想されていた人事案の決議では会社提案に61％の賛成票が集まり、勝久氏側への支持は36％にとどまった。総会終了後に記者会見した久美子氏は「大塚家を除いた議決権行使数で約８割の株主が会社提案に賛成した」と明らかにした。

株主の判断には会員制による高価格商品の販売を掲げる勝久氏、気軽に入れるカジュアルな店づくりを目指す久美子氏の方針の違いも影響した。

25日には主要取引先のフランスベッドホールディングスが勝久氏支持を表明した。家具業界ではニトリホールディングスやイケアなど製造小売りの低価格専門店が業績を伸ばす一方、中小が中心の国内メーカーは疲弊。フランスベッドの判断には「高級路線に活路を見いだすしかなく、勝久氏への賛同は妥当」との声もある。総会までに勝久氏側は自身の持ち分も合わせ、25％程度の支持を固めていた。

一方、会社側への支持は大塚家の資産管理会社や米ファンド、ブランデス・インベストメント・パートナーズなど20％程度だった。総会での投票結果に大きな差ができたのは金融機関の大株主が会社提案への賛成に回ったためとみられる。６％を保有する日本生命保険は「会社提案と株主提案の双方について、中長期的な企業価値や株式価値向上の観点から内容を十分に検討して議決権を行使した」としている。

総会に出席した男性会社員（38）は「株主総会で茶の間の家族ゲンカを見せられるなんて」とあきれ顔だった。一連の騒動によるイメージ悪化は避けがたく、総会後の会見で久美子氏は「信頼回復のため、顧客に誠心誠意尽くす」と話した。総会終了後に「株主の皆様のご判断を真摯に受け止め、まっさらな気持ちで出直す」とコメントした勝久氏は今後も筆頭株主として経営陣の交代などを求める可能性があり、新しい経営陣には安定株主づくりが急務だ。