5月31日、米国のアフリカ系男性ジョージ・フロイドさんの死によって引き起こされた抗議活動が引き続き全米で繰り広げられた。31日午後、ホワイトハウス付近のラファイエット公園には、少なくとも数百人のデモ参加者が集まり、「息ができない」と声高に叫び、暴動対策装備をした警察と対峙していた。首都ワシントンD.C.のミュリエル・バウザー市長は現地時間5月31日夜、31日夜11時から翌日朝6時まで、市内全域に夜間外出禁止令を発令した。人民網が伝えた。 全米30都市以上で大規模な抗議活動が発生 アフリカ系の人々は、米国でしばしば法執行当局から不公正な待遇を受けてきた。デモ参加者が叫ぶ「息ができない」や「黒人の命も大切だ」、「次は私?」といったスローガンには、彼らの長きにわたる無念さや不満が余すところなくぶちまけられている。31日早朝までに、米警察は全米17都市で少なくとも約1400人のデモ参加者を逮捕。米国防総省も、憲兵隊をミネアポリス市に派遣する準備をするよう軍に命令するというこれまでにない措置を取った。 国連人権高等弁務官のミシェル・バチェレ氏は28日、「数年来、すでに多くの武器を持たないアフリカ系米国人が米国警察と一般市民の手で殺されている。ブレオナ・タイラーさん、エリック・ガーナーさん、マイケル・ブラウンさんといった被害者たちの名前に、今、ジョージ・フロイドさんの名前を加えることになって大変心を痛めている。人種差別は米国に根強く存在している。米国は厳正な行動を取り、さらに多くのアフリカ系米国人が警察の手や人種差別により死亡することを阻止しなければならない」と述べた。 また米国全国有色人種向上協会は、「ジョージ・フロイドさんが警察によって殺害されたことは言葉に尽くせない悲劇だ。警察のアフリカ系コミュニティに対する暴行は奴隷制時代から現在までずっと存在している。我々は今回のような悲劇を引き起こす根源である体系的な人種主義を正すことに力を注がなければならない」とする声明を発表した。 体系的人種主義が浮き彫りにする米国の苦境 ミネアポリスは隣接するセントポールとともに「双子の都市」と称される。この「双子の都市」の幸福指数は米国でも上位にある。だが、英「ガーディアン」紙は、「フロイド事件の発生前、ここと人種主義を結び付ける人は誰もいなかった。しかし統計データを見れば、問題は一目瞭然だ。2019年、『双子の都市』の白人の失業率は4%に満たなかったが、アフリカ系の人々の失業率は10%に達した。また、95.9%の白人は高校卒以上の学歴があるが、アフリカ系のこの数字は82.2%にすぎない。ある程度において、ミネアポリスは米国の縮図だと言えるだろう。立派な外見の下には、人種間の埋まらない溝が根強く横たわってきた」と指摘した。 カリフォルニア大学ロサンゼルス校社会科学学科主任のダーネル・ハント氏は、「現在行われているデモは警察の暴力によって起こったように見えるが、その根源は単なる突発事件にとどまらない。米国の移民系マイノリティや貧しい人々はその人口比に見合わないほどの経済的プレッシャーを受けている。特に現在、米国では失業や新型コロナウイルス感染症など多重的な社会的プレッシャーの下で、一連の要因が結びつき、突発事件がきっかけとなって全米を席巻する動乱に火が付き、集団心理による行動が起こっている」と指摘する。 それと同時に、米国政府から伝わってくる情報も盛んに議論を呼んでいる。トランプ米大統領は27日、ツイッターのアカウントで、フロイド事件は「非常に悲しい悲劇的事態だ」と述べた。しかし28日のツイッターでは、一転して抗議者を非難し、さらには「強奪が始まれば、銃撃が始まる」と揚言。30日早朝にはまたツイッターを更新し、「もし抗議者がホワイトハウスの囲いを越えれば、彼らを待っているのは最も狂暴な犬と、私が見たことのあるなかで最も恐ろしい武器だ」と述べた。 ミシガン大学の歴史学者であるヘザー・アン・トンプソン氏は、「現在米国には人々の怒りに火をつけるような出来事が多すぎる。大規模な失業、新型コロナウイルスによって浮き彫りになった異なる人種や階層間の命にかかわるような健康・経済面の不平等現象、そして警察の暴力濫用だ」と述べた。トンプソン氏は、「これまでは、米国社会の不公正な現象が頂点に達した時、この国は問題解決の道を探り、新たな均衡状態に達してきた。しかし現在の米国の指導層にはどこにもこうした兆しは見られず、彼らは完全な混乱状態に陥っても構わないと思っているようにすら見える。我々は確かに瀬戸際にあり、情勢はさらに緊迫していくと思う」との見方を示した。 米誌「フォーリン・ポリシー」は評論記事で、「フロイド事件は、米国に長きにわたって存在する人種というトラウマを再び暴き出した。アフリカ系の人々は米国でその人口比に見合わない貧困率や失業率、そして警察の暴力に耐えてきた。今年は大統領選挙の年に当たる。人種問題と警察の暴力が大統領選挙で注目される議題の1つになることは間違いないだろう。しかし不安にさせられるのは、トランプ大統領がツイッターで人種主義を煽り、白人保守派の有権者の歓心を買おうとしていることだ。こうした行為は緊迫した雰囲気に拍車をかけ、状況をさらに悪化させることにしかならないだろう」と指摘した。(編集AK) 「人民網日本語版」2020年6月1日 |
【国際観察】「フロイドの死」が浮き彫りにした米国に根強く残る人種差別
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