日本コカ・コーラグループは3日、セブン&アイ・ホールディングスと共同企画した缶コーヒーを21日に発売すると発表した。新製品には主力ブランド「ジョージア」のロゴと、セブン&アイのプライベートブランド(PB=自主企画)「セブンプレミアム」のロゴが同居する。「PB商品はつくらない」としてきた日本コカに何が起きたのか。
コカ・コーラはセブンと共同で企画した「ジョージア」の発売を発表した(3日、東京都江東区)
セブンイレブン、イトーヨーカドーなどセブン&アイグループの約1万8千店だけで販売する。「ジョージア プライベートリザーブ」ブランドでブレンド、微糖(各185グラム、店頭想定100円)、ブラック(290ミリリットル、同118円)をそろえた。長期熟成させた豆を使い深いコクのある味わいにした。緑茶飲料「一(はじめ)緑茶」の共同企画品も発売する。
日本コカが小売り向けに専用商品を供給する例はあったが、小売り側のブランドを付けた商品を売り出すのは初めてだ。日本コカは新製品について「PBでなく、あくまで共同企画の『ジョージア』だ」(和佐高志マーケティング本部副社長)と説明する。
だが、昨夏に期間限定でセブンイレブン専用に供給したレモン風味のコカ・コーラはおなじみの「コカ・コーラ」のロゴがあるだけだった。清涼飲料の巨人が今回、セブンとの連携で一歩踏み込んだのは明らかだ。
背中を押したのは厳しい「コーヒー戦争」だ。2014年の缶コーヒー市場は3億4300万ケースで減少傾向が続く。一方、いれたてのコーヒーを提供するコンビニコーヒー市場は急拡大。コンビニ大手5社の販売計画では14年度は計13億杯と前年度の倍に達する勢いだ。
セブン&アイは缶コーヒーの専用商品ではサントリー食品インターナショナルと組み、昨年1月から「ボス」ブランドの共同企画品を展開してきた。飲料総研(東京・新宿)の調べでは、トップブランドの「ジョージア」の出荷数量が昨年2%減ったのに対し、2位の「ボス」は6%増えた。
飲料メーカーにとって、コンビニの限られた商品陳列棚にどれだけ自社製品を置けるかは最大の関心事。強大な販売力を持つセブンの棚ならなおさらだ。「PBはつくらない」という自負には両社のロゴを併存させることで折り合いをつけ、名より実をとった形だ。
日本コカの和佐副社長は「香りや飲み方など消費者のコーヒーに対する嗜好が多様化するなか、(セブン&アイとの共同企画で)独自ブランドを売り出すことが売り上げ強化につながる」と話す。
セブン&アイは今回、サントリーから日本コカにくら替えすることになる。「缶コーヒーのトップメーカーと組みたかった。コカ・コーラグループならサントリーではつくれない商品ができる」。3日、都内で開いた日本コカと共同の商品発表会でセブン―イレブン・ジャパンの鎌田靖取締役は、独自商品の強化に笑顔を見せた。
セブン&アイは業界最大手と組んで魅力のある独自商品を開発し、競争力を高める戦略をとっている。カップ麺では日清食品、ビールはアサヒビール、スナック菓子ならカルビーだ。日用品でも、花王がセブン&アイ専用商品として柔軟剤を発売するなどの動きが広がる。棚を握るのはどこか。メーカー間の攻防も一段と激しさを増しそうだ。(篠原英樹、松田直樹)