広島、長崎両市が2019年の夏に米国ニューメキシコ州ロスアラモスで企画していた原爆展が、中止されることになった。30日、関係者への取材で分かった。米国の原爆開発「マンハッタン計画」の拠点で、会場となる現地の博物館側から、展示内容に異論が出たことが理由という。
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原爆展は、被爆者の遺品や写真などを展示して被爆の実相と悲惨さを伝え、核兵器廃絶を訴える内容で、広島、長崎両市が設立した「ヒロシマ・ナガサキ平和アピール推進委員会」が1995年度から世界各地で開いてきた。これまでに18カ国47都市で実現した。
広島平和記念資料館(広島市中区)によると、ロスアラモスでの開催は、昨年8月6日の広島平和記念式典に「ロスアラモス歴史博物館」の当時の館長が出席したことをきっかけに準備が始まった。平和記念資料館の志賀賢治館長も歴史博物館を訪れ、調整を続けてきたという。
しかし、歴史博物館を運営する「ロスアラモス歴史協会」の理事会で「核兵器の廃絶に向けて、科学的な解体方法や外交による具体的な防衛策を盛り込むべきだ」と慎重な意見が出て中止が決まり、今年2月に広島側にメールで通知があったという。
平和記念資料館の諏訪良彦啓発課長は「核兵器廃絶には理解を示してくれていると受け止めている。今後も協議を続けたい」と話している。両市は19~20年度、米ロサンゼルスの全米日系人博物館やハワイ大学でも原爆展の開催を検討している。(松崎敏朗)