九州電力川内原子力発電所の再稼働差し止め仮処分申請を担当した鹿児島地裁の前田郁勝裁判長(57)は名古屋市出身。東京大工学部在学中、登山中の事故で両足が不自由となった。判事補任官は36歳の時で「初の車いすの裁判官」として話題になった。
東大卒業後は福祉機器の開発に取り組んだこともあったが、けがをしたことで人間に対する興味が増し、法曹を志望した。当事者双方の主張を聞き、納得を得るよう努力する裁判官の姿に感銘し、任官を望んだという。
名古屋地裁を皮切りに宮崎、大阪、広島、福岡などの各地裁を経て、2013年4月に鹿児島地裁に着任。主に民事訴訟を担当してきた。
元同僚で裁判官出身の弁護士によると、足が不自由なことについて「特別扱いされるのは不本意」と周囲に話していたという。この弁護士は「当事者の話を根気よく聞き、人の痛みをきちんと理解する。言葉を選びながら丁寧に話す裁判官」と評している。