【ドバイ=久門武史】サウジアラビアのサルマン国王(79)は29日、王位継承者のムクリン皇太子を解任し、副皇太子のムハンマド内相(55)を新たな皇太子に指名した。継承順位2位の副皇太子には国王の息子ムハンマド国防相をあてた。国営通信が伝えた。1月に死去したアブドラ前国王が取り立てたムクリン氏を遠ざけ、近親者を登用することで権力基盤を一段と固める狙いだ。
ムハンマド新副皇太子の年齢は20代後半から30代半ばの間とみられる。
サルマン氏は初代国王アブドルアジズ氏の息子にあたる「第2世代」の一人。初代の孫の「第3世代」が皇太子に就くのは初めて。ムハンマド皇太子は国王の同腹の兄、故ナエフ皇太子の息子。
皇太子は政治、副皇太子は経済の分野で、それぞれ多数の閣僚らを束ねる評議会のトップを続ける。今後は、2人のムハンマド氏への権力集中が一段と進むとみられる。
サルマン国王は初代国王の複数の妻のうちスデイリ家出身のハッサ妃が生み、結束が固いとされる7兄弟(スデイリ・セブン)の一人。前国王は異母兄で、一定の緊張関係があったとされる。
サルマン氏は国王就任後、前国王の息子たちを相次ぎ要職から解任した。今回、前国王が重用した異母弟のムクリン氏も皇太子から外したことで、サウジ王室におけるスデイリ家の存在感が高まるのは間違いない。
さらに国王は40年ぶりに外相を交代させた。高齢のサウド氏の後任にアデル・ジュベイル駐米大使を起用した。保健相には国営石油会社サウジアラムコのハリド・ファリハ最高経営責任者(CEO)をあてた。
イスラム教スンニ派の盟主を自任するサウジは内外の激しい情勢変化に直面している。3月に隣国イエメンのシーア派武装組織「フーシ」に対する軍事作戦を開始。フーシを支援するシーア派の大国イランとの緊張は高まったままだ。
過激派組織「イスラム国」(IS)はサウジを敵視。安全保障上の脅威が強まっている。サウジ内務省は28日、同国内での破壊活動の計画容疑などでISと関係する93人を逮捕したと発表した。