【北京=阿部哲也】中国の景気減速の影響が新車の販売市場にも及んできた。中国汽車工業協会が11日、発表した4月の販売台数は前年同月に比べ0.5%少ない199万4500台で、実質2年7カ月ぶりのマイナスとなった。中国は自動車販売で世界最大の市場となっており、その変調は自動車大手の戦略にも影響を与えそうだ。
新車の販売が前年に比べて落ち込むのは春節(旧正月)を挟み統計が変動しやすい1~2月を除けば、反日デモの影響で1.8%減少した2012年9月以来だ。
中国の新車市場はマイカーブームなどを支えに、14年前半まで1ケタ台後半から2ケタ台の高成長が続いていた。しかし景気減速が鮮明になりはじめた14年夏以降は急速に伸びが鈍化した。
背景には中国の企業業績の悪化と個人消費の落ち込みがある。企業は「不要不急な投資は控える」(石炭大手の中国神華能源)立場で、トラックやバンなどを買い控える動きが広がる。4月の商用車の販売は17.6%減と大きく落ち込んだ。
個人利用が多い乗用車も4月は3.7%増にとどまった。景気の先行きが不安なために、新車を買うことを先延ばしする消費者が増えているためだ。「大幅に値引きしても客足は戻らず、在庫車はたまる一方だ」(北京市の日産自動車販売店)。適正水準の2倍以上に当たる2~3カ月分の在庫を抱えた販売店も多く出ているという。
14年の中国の新車販売台数は2349万台と前年に比べ6.9%増え、世界全体の4分の1を占めた。世界の自動車大手にとって中国市場の重要性は増している。ただ、独フォルクスワーゲン(VW)や米ゼネラル・モーターズ(GM)などシェア上位を中心に大幅な増産のための投資が広がり、「つくりすぎ」の懸念も強まっている。