【カイロ＝押野真也】過激派組織「イスラム国」（ＩＳ）は20日夜（日本時間21日未明）までに、古代遺跡で知られるシリア中部のパルミラを制圧したもようだ。複数の中東メディアが伝えた。シリア政府軍はＩＳとの戦闘で撤退したという。

パルミラは２～３世紀に栄えた交易の要衝で、現在でもシリアの物流の重要拠点とされる。同地がＩＳの支配下に置かれれば、ＩＳと敵対しているアサド政権にとっては大きな痛手となる。今後、アサド政権側はパルミラの奪還作戦を展開する可能性もある。

パルミラは世界遺産に指定された遺跡があることで知られる。ＩＳは「偶像崇拝の禁止」を主張し、イラクの支配地域で石像や遺跡などの重要な文化財を破壊した経緯がある。シリアや欧米の識者からはパルミラの遺跡も破壊されるとの懸念が広まっている。

パルミラ近郊を巡っては、13日以降、ＩＳ戦闘員とシリア政府軍が激しい戦闘を続けてきた。16日にはパルミラに侵攻しようとしたＩＳ戦闘員を政府軍が撃退し、ＩＳに占拠されていた北部を政府軍が奪還したとも伝えられていた。

アサド政権は首都ダマスカス近郊の防衛に集中しており、支配地域が次第に狭まっている。一方、ＩＳは米国や有志連合による空爆で弱体化したとみられたが、最近になってイラク中西部の要衝ラマディを制圧するなど、攻勢を強めている。