政府と損害保険各社は3日、共同で運営する家庭向け地震保険の保険料を全国平均で19%引き上げる方針を固めた。南海トラフなど巨大地震の最新のリスク評価を織り込み、保険金の支払い余力を高めるためだ。損害区分は現行の3区分から4区分に改め、被害状況に応じてよりきめ細かに補償する体制も整える。
損保各社でつくる損害保険料率算出機構が同日、地震保険の保険料を引き上げる必要があるとの試算を財務省の有識者会合で示した。引き上げ幅は平均で19%、24%、28%の3案を提示。関係者によると有識者からは家計の負担を考慮し、19%の上げにとどめるよう求める声が多く出た。こうした意見を踏まえ、今夏中に機構が19%の値上げを金融庁に届け出る。
値上げは早ければ2016年秋に実施する見通し。既存の契約者にも更新時に新しい料率が適用される。東京都内の主に非木造住宅の場合、保険金1000万円あたりの年間保険料は現在2万200円で、全国平均並みの値上げだと2万4000円強に上がる。
地震保険は昨年7月にも平均15.5%の値上げが実施されたばかり。家計の負担軽減のため、政府と業界は再値上げを複数回に分けて段階的に実施する方向で調整する。損保各社の対応力に応じて実施時期は後ずれする可能性もある。
政府と損保各社は地震保険の料率と損害区分の見直しを一体で議論している。損害区分の分け方によって保険金の支払総額が変わり、必要な値上げ幅にも響くためだ。
損害区分は現在、被害の大きさに応じて契約金額の100%の保険金を支払う「全損」と50%を払う「半損」、5%だけの「一部損」の3区分になっている。3日の会議では、これを4区分に増やす案が示された。半損を2つに分け、契約金額の60%を払う「大半損」と30%の「小半損」を設ける。
現在の査定基準では、建物の柱や壁などの損害額が時価の20%以上50%未満になると半損と認定される。これを見直し、20%以上40%未満を小半損、40%以上50%未満を大半損に認定するようにすれば、保険料の値上げ幅は19%になるという。
政府と損保各社は1兆2000億円を超す保険金支払いが発生した11年の東日本大震災を踏まえ、地震保険の利便性と持続可能性を高めるための制度改革を検討してきた。相次ぐ保険料の引き上げは政府による巨大地震の被害予測などを反映し、保険金の支払い余力を確保するための措置だ。
もっとも、家計には大幅値上げが負担増としてのしかかる。政府と損保業界には負担軽減に向けた一段の工夫が求められそうだ。