胎児の染色体疾患の有無を調べる羊水検査が2013年に約2万600件(前年比3%増)実施され、過去最多となったことが26日までに、国立成育医療研究センター(東京)の左合治彦周産期・母性診療センター長らが実施した出生前診断に関する調査で分かった。染色体疾患がある確率を算出する母体血清マーカー検査も約2万6400件(同9.5%増)で最多。胎児の疾患の可能性が高まるとされる高齢妊娠を背景に出生前診断への関心の広がりが示された。
障害が判明した場合の人工妊娠中絶という倫理的問題も指摘され、正確な情報提供に基づき妊婦の意思決定を支える遺伝カウンセリングの重要性が一層高まりそうだ。
13年には高精度の新出生前診断も臨床研究として開始された。結果が陰性なら流産リスクがある羊水検査を回避できるため、同年の羊水検査の動向が注目されていたが、減少には結び付かなかった。左合センター長は「新出生前診断は実施施設や対象者が限られ、従来の検査を受ける人が増えたとみられる。各検査への理解を深めるための遺伝カウンセリング体制整備や、社会的な議論が求められる」と話した。
左合センター長らは1998年のデータから継続して収集。08年までは受託実績がある全ての検査機関を対象に実数を調べ、09年以降は実施件数全体の8~9割程度を占める主要機関分を把握した上で、推計値として出している。
羊水検査は98~02年にかけ1万件前後で推移していたが、徐々に増加して12年には約2万件となり、13年はさらに約600件増えた。
母体血清マーカー検査は98年に2万1708件実施されたが、遺伝カウンセリング体制が不十分だったことなどを踏まえ旧厚生省の専門委員会が99年に「医師は妊婦に勧めるべきではない」との見解をまとめ、01年には1万5308件まで減少。その後、増加傾向に転じ、13年は前年より約2300件増の約2万6400件だった。〔共同〕