【ブリュッセル=森本学】欧州連合(EU)は27日開いたユーロ圏財務相会合で、ギリシャ側が求めた6月末の金融支援の期限延期の要求を退けた。ギリシャ側が実施を表明した、EU側の財政改革案を巡る国民投票を事実上拒否する内容だ。支援交渉が合意に達しないまま期限を迎えれば、ギリシャの債務不履行(デフォルト)の現実味が一段と増す。ギリシャ支援を巡る交渉の行方はさらに不透明となった。
EUは27日午後(日本時間同日夜)からブリュッセルでユーロ圏19カ国の財務相会合を開き、ギリシャ問題への対応を協議した。ギリシャ側は金融支援を再開する条件として欧州連合(EU)が求める財政改革案を巡って7月5日に国民投票する方針を正式に表明。6月末に迫った金融支援の期間の延長を求めた。
会合後に会見したデイセルブルム議長(オランダ財務相)は「残念ながら6月30日に今の金融支援は期限を迎える」と述べ、ギリシャの延長要請を拒んだことを明らかにした。そのうえで「ユーロ圏の金融安定を確保するために必要な措置をとる用意がある」と、ギリシャを突き放した。ギリシャ側に国民投票を撤回させる狙いもにじむ。
一方、ギリシャのバルファキス財務相は会合後の記者会見で支援延長の要請が却下されたことについて「ユーロの信頼を永続的に損ねる懸念がある」と批判した。そのうえで「デフォルト回避へ(6月30日まで)戦い続ける」と語った。
ギリシャは30日に国際通貨基金(IMF)に対し15億ユーロ超の支払いを控える。このまま期限を迎えればギリシャが支払いに応じられない可能性は高い。一方、ユーロ圏の財務相らはギリシャが財政改革案の受け入れに応じれば、11月までの支援延長や資金繰り支援などに応じる構えだ。
ギリシャ支援の先行きが不透明になり、デフォルトの現実味が増したことで、週明けにもギリシャの銀行預金の流出が加速し、銀行不安が再燃するリスクもありそうだ。ギリシャ金融当局が混乱を避けるために銀行の休業を決めたり、現金引き出し制限など「資本規制」の導入を迫られたりする可能性が大きい。
仮にギリシャがIMFへの支払いを乗り越えて国民投票を実施できても結果は予断を許さない。
債権団の提案が否決されれば、金融支援に依存するギリシャ財政の破綻は避けられない。ギリシャが支払う義務がある金額は8月末までに100億ユーロ前後に達する。
ギリシャの財政破綻が視野に入れば、欧州中央銀行(ECB)もギリシャの銀行への資金繰り支援を打ち切らざるを得ない。同国の銀行危機につながる懸念がある。