政府は30日夕の臨時閣議で、財政健全化計画などを盛り込んだ経済財政運営の基本方針(骨太の方針)と成長戦略、規制改革の実施計画をそれぞれ決定した。2020年度の財政の黒字化目標を堅持する一方、景気腰折れを懸念し歳出抑制は厳格な目標を設けず、緩やかな「目安」とした。経済成長と構造改革による税収増で財政を立て直す成長重視を鮮明にした。
臨時閣議に臨む安倍首相(30日午後、首相官邸)
決定前に開いた経済財政諮問会議と産業競争力会議の合同会合で、安倍晋三首相は「我が国の経済は四半世紀ぶりの良好な状況に達しつつある。この好機を逃すことなく経済と財政の一体改革を不退転の決意で断行する」と表明した。
財政健全化計画では、国と地方の財政状況を表す基礎的財政収支を20年度に黒字にする目標を維持した。基礎収支は公共事業や社会保障といった政策経費を、借金に頼らずにどの程度まかなえているかを示す指標だ。
内閣府の試算によると15年度は16.4兆円の赤字。日本の経済規模を示す国内総生産(GDP)の3.3%に相当する。
財政再建の進捗を確認するため、18年度に赤字幅を1%程度まで縮める中間評価の目安を設けた。社会保障や公共事業など政策分野ごとの歳出額を減らす数値目標は見送った。「財政健全化が経済の下押し圧力とならないようにしながら歳出を抑制していく」(甘利明経済財政相)という。
国の歳出のうち、借金返済や地方への仕送りを除いた一般歳出の水準にも、3年間で1.6兆円という目安を設けた。社会保障費だけで年1兆円増えるとされているが、第2次安倍政権からの3年間の増加額が1.6兆円程度に抑えられてきた基調を守る、というものだ。社会保障費で1.5兆円、それ以外は0.1兆円の増加を想定する。
一般歳出の目安は「経済・物価動向等を踏まえる」とした。デフレ脱却が進めば、物価が上昇し社会保障費が増える可能性がある。世界的な景気後退などで国内経済が冷え込んで生活保護費などが増加する恐れもあり、目安に幅を持たせた。
歳出改革への取り組みとして(1)新薬に比べて割安な後発薬の使用割合を引き上げる(2)金融資産に応じて医療・介護の負担を決める(3)高所得者の年金給付見直し――などを例示した。それぞれがどれだけ歳出規模を減らすのかは示さなかった。
税収増への期待をかける成長戦略は、労働力不足による供給制約を解消するため、企業の生産性向上を後押しする政策姿勢を打ち出した。14年の成長戦略は法人実効税率の引き下げや、岩盤といわれる農業や労働分野の規制改革が中心だったが、15年の戦略はやや小粒。企業の背中を押すには力不足との指摘もある。