【ブリュッセル=森本学】ギリシャ政府は30日が支払期限だった国際通貨基金(IMF)への約15億ユーロ(約2000億円)の債務を返済できなかった。IMFはこれを「延滞」とみなしている。欧州連合(EU)などによるギリシャへの金融支援も同日、失効した。ギリシャは土壇場でEUに対し新たな支援策を要請したがEU側は拒否した。2009年以降、繰り返されてきたギリシャ危機は新たな局面を迎えた。
IMFはギリシャの支払期限だった日本時間午前7時すぎ、ギリシャから支払いがなかったとの声明文を公表した。先進国でIMFへの支払いを延滞した初のケースとなる。ギリシャ政府から支払いの延期を求める要請があったことも明らかにした。今後はIMF理事会が支払いの延滞を正式認定する手続きに入る。
IMFが支払い延滞を正式認定すると、ギリシャへ融資している他の公的機関の判断にも大きな影響を与える。例えばEUによるギリシャ支援の“実行部隊”である「欧州金融安定基金(EFSF)」がギリシャが実質的な債務不履行(デフォルト)に陥ったとみなせば、融資の返済前倒しを請求できる。
欧州中央銀行(ECB)もギリシャの銀行への資金繰り支援を続けるかなど難しい判断を迫られる。ECBが支援の打ち切りなどに踏み込めばギリシャの銀行は経営に行き詰まる。
EUなど債権団のギリシャへの金融支援も終了期限を迎えて失効した。ギリシャ政府は期限間際の30日午後になって、金融支援の2年間延長や債務再編を求める新たな提案を提出。ユーロ圏の財務相は30日夜に電話で緊急会合を開いて対応を協議したが、ギリシャ政府の「反緊縮」姿勢が変わっていないとして提案を退けた。
財務相会合のデイセルブルム議長(オランダ財務相)は電話協議後、米CNNテレビのインタビューで「ギリシャ政府の姿勢は変わっていないようだ」と語った。1日午前(日本時間同日夜)には電話によるユーロ圏財務相会合を再び開き、ギリシャの状況を慎重に点検する。
ギリシャが金融支援の期限切れ直前になって要請してきた新支援策は、ユーロ圏の金融安定網である「欧州安定メカニズム(ESM)」に債務再編を含む2年間の金融支援を求める内容。従来の金融支援ではIMFが債権団に加わっているのに対し、新提案はユーロ圏単独での支援を求めた。
ただギリシャ政府はEUなどが従来の金融支援を延長する代わりに求めている財政再建策の受け入れには反対する強硬姿勢はなお崩していない。
ユーロ圏側はギリシャが7月5日の国民投票の結果を受けて財政再建策の受け入れに転じた場合には、新たな金融支援の交渉を進める構えだ。ロイター通信などによると、メルケル独首相は30日、与党議員に対し、5日の国民投票が終わるまではギリシャ政府から新提案があっても議論できないとの考えを示した。