【ブリュッセル=森本学】ギリシャの国民投票で、欧州連合(EU)が求めていた緊縮策が拒まれたことで、EU側はギリシャ支援交渉の戦略練り直しを迫られる。7日にはユーロ圏の緊急首脳会議を開き、新たな金融支援の道を探るが、ギリシャ側が「民意」を盾に緊縮策への強硬姿勢を強めてくる可能性もある。交渉が決裂すればギリシャの「ユーロ圏離脱」が現実味を増す。
ユーロ圏財務相会合のデイセルブルム議長(オランダ財務相)は5日公表した声明で、「ギリシャ経済の回復にとって困難な措置や改革は避けられない。ギリシャ政府の動きを待っている」と述べ、まずはギリシャ側の出方を見極める考えをみせた。
ギリシャを巡っては6月末にEUなどによる金融支援が期限を迎えて失効。国際通貨基金(IMF)への返済を延滞し、事実上の債務不履行(デフォルト)状態に陥った一方で、金融支援は「空白」状態となっている。
欧州側はギリシャが国民投票で反緊縮を貫けば「ユーロ圏離脱」につながりかねないとけん制することで緊縮策受け入れを呼び掛けてきた。ギリシャに対し強硬な姿勢をとり続けてきたドイツのメルケル首相などは厳しい立場に立たされる可能性もある。一方で、イタリアのジェンティローニ外相は「改めて合意を探るべきだ。欧州の弱体化を踏まえれば(それ以外に)『ギリシャの迷宮』から逃れる道はない」とギリシャへ同情的な姿勢を示し、早期の解決を訴えた。
チプラス首相はユーロ圏残留を目指し、「EUとの交渉で有利になる」ため、国民に緊縮反対の投票を求めていた。EU側に対し、年金支給の削減など緊縮姿勢の緩和や、債務の元本の減免も含めた新たな金融支援を求める見通しだ。国際通貨基金(IMF)は2日の報告書で、ギリシャの財政には新たな金融支援が欠かせないと結論づけた。
チプラス首相は従来の金融支援が失効する直前に、EU側が求めていた緊縮策をおおむね受け入れるとの書簡をユンケル欧州委員長らに送っていた。国民投票で緊縮反対が多数を占めたことで、こうした姿勢をチプラス政権がどこまで変化させるかをEU側は見極める方向だ。
EU側ではチプラス政権の政策実行への不信感も根強い。新たな支援に応じる条件として、財政改革に関連する法案の議会での成立などを求める公算が大きい。ギリシャ側との協議は難航が避けられず、交渉が長期化する懸念もある。