【ブリュッセル=森本学】ギリシャへの最大860億ユーロ(約11兆8千億円)の新たな金融支援の条件を巡って、欧州連合(EU)など債権団とギリシャ政府は11日、実務者協議で大筋合意した。ユンケル欧州委員長は同日夕にも、ドイツのメルケル首相、フランスのオランド大統領と正式合意へ向け手続きを進めるか協議する。早ければ14日にもユーロ圏財務相会合で正式合意に達する可能性が出てきた。
11日朝、ギリシャ政府の報道官が支援の条件を巡って大筋で債権団と合意したと表明した。欧州委員会の報道官も同日昼、実務レベルでの協議を大筋で終えたことを認めた。そのうえで「さらに政治合意が必要だ」と説明した。ユンケル氏と独仏両国の首脳が協議し、実務レベルの合意を受け入れるか政治判断する見通しを示した。
合意内容について欧州委は「政治合意に達するまでは差し控えたい」と述べるにとどめた。欧州メディアによると、財政目標ではギリシャの基礎的財政収支を2016年までに黒字化し、同収支の国内総生産(GDP)に対する比率を18年には3.5%まで改善させることで一致した。
ギリシャ支援を巡っては7月13日のユーロ圏首脳会義ですでに、最大860億ユーロを3年間支援する方向で原則合意を済ませた。7月下旬から債権団がアテネ入りし、ギリシャ政府と金融支援のための条件など詳細の調整を詰めていた。
アテネにおける調整では、ギリシャの銀行が抱える不良債権の処理方法や、ギリシャの国有施設の民営化を加速するための500億ユーロ規模の政府ファンド創設の制度設計なども議題となった。ギリシャが求める金利減免や返済期限の延長など債務負担の軽減策の扱いも明らかになっていない。
ギリシャ政府は11日の実務レベルでの大筋合意を受け、13日までにギリシャ議会で金融支援案と、支援の正式決定の条件となる追加の改革案を採決したい考え。そのうえで14日にも開く臨時のユーロ圏の財務相会合で金融支援案の正式決定にこぎつける日程を描く。
ギリシャは20日に欧州中央銀行(ECB)に対し、国債32億ユーロを償還する期限を迎える。自力での資金調達は困難な情勢で、それまでに新たな金融支援に基づく融資を受けられるかが焦点となっている。
ただ金融支援が発動するには、ギリシャに強硬姿勢を見せるドイツやフィンランドなどの議会でも金融支援策が承認される必要があるなど、実際に支援が実行されるまでには、なおいくつかのハードルが残されている。