シンガポール航空は、新型コロナウイルスの影響で大打撃を受けている旅行業に新たな活力を注ぎ込むべく、10月末から同じ空港発着の「どこにも行かない」フライトを運行することを計画している。計画しているのは、チャンギ国際空港を出発し、同空港に戻ってくる約3時間の遊覧飛行だ。同様の計画は、日本やブルネイ、オーストラリア、台湾地区などでも打ち出されている。民航資源網が報じた。
「どこにも行かない」フライトは、特殊な観光商品で、出発後、各種サービスが通常通り機内で提供され、遊覧飛行した後にまた同じ空港に着陸する。
(資料写真、撮影・Jessica)
ロイヤルブルネイ航空は9月初めに「どこにも行かない」フライトを打ち出した。乗客は機内で食事をしながら、ブルネイやマレーシアのボルネオ島の海岸線を85分にわたり遊覧飛行することができる。
オーストラリアのカンタス航空は11月から南極大陸遊覧飛行を提供する計画だ。メルボルン、シドニー、ブリスベン、パース、アデレードの5都市発着で、合わせて7便予定されている
JALは国際線旅客機を利用して、成田発着の周遊チャーター「空たび 星空フライト」の運航を計画している。3時間半のフライトで、乗客は、夕日や美しい星空を鑑賞できるほか、ハワイ線のメニューをアレンジした機内食も味わうことができる。ANAも今月、エアバス A380型機によるチャーターフライト実施を計画している。
台湾地区の星宇(スターラックス)航空は8月7日に、同社の董事長が自ら操縦し、同地区の東海岸をフライトする「なんちゃって出国」便を打ち出し、チケット188枚が、30秒もしないうちに売り切れた。長栄(エバー)航空は8月8日に、父の日に合わせた特別機を打ち出し、座席309席が満席となった。同機は台北桃園空港を出発し、2時間45分フライトして、再び同空港に着陸した。
民航資源網の専門家・李明業氏は、「旅客が『どこにも行かない』フライトを選ぶということは、航空の分野の需要について2つの点を示している。1つは、旅行者の飛行機を利用した旅行のニーズが新型コロナウイルスにより完全に消えたわけではない点だ。そのニーズは一時的に抑制されてしまっただけで、アフターコロナの時期が訪れると、その潜在的ニーズが少しずつ表面化している。2つ目は旅行が大好きで、生活を楽しんでいる一部の旅客にとって、飛行機は、単なる交通手段ではなく、ライフスタイルの一種であるという点だ。そのような人にとって、飛行機を利用した旅行は既に生活習慣の一部となっている」と分析する。
経営コンサルティング会社・ローランド・ベルガーのグローバルパートナー兼中華圏副総裁・于占福氏は、「これら遊覧飛行や極地飛行、なんちゃって出国などの航空商品は、航空会社が直面している経営困難という問題を本質的に解決することはできないものの、危機を緩和するムードを作り出してくれる」との見方を示す。
そして、「現在、飛行機の利用回数は中国人一人当たり年間平均0.5回と、世界平均を下回っている。米国の2.7回と比べると、大きく下回っている。上記のサービスは、現在の中国市場では、不思議で、想像しにくいサービスかもしれないが、発達、成熟した航空市場(航空輸送の普及率という観点から見て)では、そのようなサービスが打ち出されて市場で大きな反響となるということは、民間航空運輸が一般の人々のライフスタイルに深く浸透し、大きな影響を及ぼしていること、そして、民間航空文化が既に一般の人々の間でしっかりとした基礎を築いていることを示している。空港の搭乗手続き、搭乗、機内での体験、空港でのショッピングなどが、人々の行動の記憶を呼び起こし、心理的慰めを与える」と説明する。(編集KN)
「人民網日本語版」2020年9月21日