【カイロ=押野真也】イスラエルとパレスチナとの衝突が激化する懸念が強まっている。9月中旬以降、両者の対立が深まり、国連のゼイド人権高等弁務官は8日、イスラエル側が過度に武力を行使しているとして懸念を表明した。
両者の衝突は、パレスチナ系住民が信仰するイスラム教と、ユダヤ人が信仰するユダヤ教双方の宗教儀式の期間が重なった9月中旬に起きた。ユダヤ人が大半を占めるイスラエルの治安部隊はパレスチナ系住民のデモ隊などを実力で排除し、これまでに130人以上のパレスチナ人が負傷したとされる。
パレスチナ系住民がイスラエルの治安部隊やユダヤ人の一般市民を襲撃する事件も起きており、双方の対立感情は高まっている。武力の面で劣勢に立つパレスチナ系住民が、過去に起こしたような「インティファーダ」と呼ばれる大規模な民衆蜂起を再び起こすとの懸念も強まっている。
イスラエル治安部隊とパレスチナ系住民との衝突は過去に何度も起きている。今回は双方の宗教の聖地である「神殿の丘」(アラビア語名はハラム・アッシャリーフ)周辺でパレスチナ系住民とイスラエルの治安部隊が衝突したのがきっかけ。
同地にあるモスク(イスラム教の礼拝施設)を治安部隊が封鎖し、イスラム教徒を排除したことから、パレスチナ系住民の反発が強まった。同地はパレスチナ系住民だけでなく、世界各地のイスラム教徒にとっても聖地の一つであることから、イスラム教を国教とする各国からイスラエル政府の対応を批判する声が強まっている。