千葉県松戸市で9月、通行人らに襲いかかった犬に、警察官3人が住宅街で拳銃を計13発撃ち射殺した。銃弾は住宅の壁や塀を傷つけ、住民は不安を訴えた。飼い主ら3人がかまれて軽傷を負い、県警は「使用は適正だった」と主張するが、全国から「撃ち過ぎだ」と批判が相次いだ。
雄の紀州犬(体長約120センチ)が9月13日夜、飼い主の松戸市内の男性(71)方から逃げ近所の男子大学生と20代女性をかんだ。松戸署員が翌14日未明に駆け付けた時には犬は取り押さえようとした飼い主の腕もかみ、覆いかぶさっていた。
松戸署によると、署員3人は横に並び、ゆっくり前進してきた犬と3~4メートルの距離を取って5分間で13発撃った。ほぼ半数の6発が犬の頭や心臓などに当たり、貫通した弾や外れた弾が住宅の壁やブロック塀など約10カ所を損傷させた。
松戸署は朝になると登校する小学生らに被害が及びかねないことから、その場で飼い主に了承を得て射殺したとしている。犬用のおりや網も手配していたが間に合わなかったという。
現場は住宅街で、付近にはコンビニやレンタルビデオ店もある。同署の浜元裕彦副署長は「突然通行人が来ないかなど、周囲の安全には配慮していた。犬だけを気にして撃っていたわけではないので、命中率が悪くなった」と説明する。
だが発砲の報道から数日で県警には電話やメールが全国から約560件寄せられ「なぜそんなに撃ったのか」など批判的な意見が8~9割を占めた。銃関連の製品を取り扱う会社の関係者は「日本の警察官の射撃訓練回数は欧米の半分に満たない。半分程度しか命中しなかったのは技能の問題ではないか」と話す。
一方、警察への激励や飼い主の責任を問う内容も1~2割あった。
松戸署は飼い主について、過失傷害や県動物愛護条例(係留義務)違反の疑いで立件を検討している。同署の聴取に飼い主は「散歩の頻度が減り3、4年前から家族にかみつくようになった」と話しているという。〔共同〕