木製の縦笛「コカリナ」の愛好者が、昨年9月の関東・東北豪雨で被災した大生小(茨城県常総市)の校庭の木をコカリナとしてよみがえらせ、児童約120人に贈ろうとしている。2月7日に製作費を集めるためのコンサートを開く予定で、実行委員会の浅野妙子さん(60)は「被災者を癒やしたい」と話している。
コカリナは、奏者として知られる埼玉県飯能市の黒坂黒太郎さん(66)が、ハンガリーの露店で売られていた木笛を基に国内の木工家と改良を重ねて作った。優しい音色が特徴で、長さ約8センチのソプラノコカリナと呼ばれる高音域が出るものから、ワイン瓶ぐらいの大きさのものまである。
昨年9月末、浅野さんがボランティアとして掃除や食事を手伝っていた常総市の避難所で、たまたま小学生の教科書に載っていた歌を演奏した。それまで寝転んでばかりで表情がなかったお年寄りの顔がみるみるうちに明るくなっていった。浅野さんは「コカリナには励ます力があると思った」と振り返る。
全国から愛好者が集まる催しが10月、長野県山ノ内町で開かれた際、浅野さんがこうした体験談を報告した。校舎が使えない状態が続いていた大生小の児童たちを励まそうと、水没して葉が黄色く変色し枯れかけていた1本のイチョウの木を使って、黒坂さんに協力を得ながらソプラノコカリナをプレゼントすることになった。
11月、浅野さんら地元愛好者が中心となって実行委を設立。製作費を賄うためのコンサートのチラシを配ると、会場となる守谷市中央公民館(茨城県)の約400席分のチケットはあっという間に完売した。伐採された木は三重県の専門業者が加工し、2月下旬ごろには児童たちの元へ届けられる見通しだ。〔共同〕