【デモイン(米アイオワ州)=吉野直也】11月の米大統領選の民主党の本命候補、クリントン前米国務長官(68)が在任中に公務で使った私用メールに極秘情報が含まれていたことに神経をとがらせている。接戦が伝えられる来月1日の初戦、アイオワ州党員集会を目前に控え、その影響を懸念しているためだ。共和党候補はクリントン氏を一斉に批判した。
国務省のカービー報道官は29日、メール22通に極秘情報が含まれていたと明らかにした。極秘情報の存在を米政府が公式に認めたのは初めて。国務省は月に1度の割合でクリントン氏の公務メールを公開している。送受信したメール約3万通について今月末までに公開を終える予定だったが、一部は2月に持ち越す方向になった。
これまでに約1300通が機密を含むとされたが、機密度は低かった。カービー氏は極秘扱いにした経緯について「クリントン氏の送受信時、メールに機密指定の印はなかった。情報機関の要請で新たに極秘扱いにした」と説明した。当時は問題なかったものの、現在の米外交・安全保障政策にもかかわると判断したとみられる。
クリントン氏はメールに含まれる情報は在任当時、機密に指定されておらず、法令には触れていないと主張してきた。国務省の対応はメールの公開により、潔白を訴えてきたクリントン氏の立場を揺るがすことになりかねない。クリントン陣営は「非公開に断固反対する」との声明を発表した。
主要な世論調査を平均した米政治専門サイト「リアル・クリア・ポリティクス」によると、アイオワの支持率はクリントン氏の46.8%に対し、バーニー・サンダース上院議員(74)は44.3%と拮抗している。クリントン陣営は、直前の極秘メール問題がアイオワ決戦に飛び火しないよう沈静化に努めている。
共和党の候補指名争いで支持率首位を保つ不動産王ドナルド・トランプ氏(69)はツイッターで「こんな間違った判断をする人間がどうして次の大統領になれるんだ。クリントン氏は国家安全保障を危うくする。大統領の器ではない」と非難した。
マルコ・ルビオ上院議員(44)は「極秘情報を私用アドレスで送受信していたことを認めるわけにはいかない」と反発。サンダース氏は「クリントン氏のメール問題について話したくない。政治問題化すべきではない」と述べるにとどめた。