四国運輸局は13日、四国4県の公共交通に関する2025年度の需要推計を公表した。人口減が進む中、インバウンド(訪日外国人)が現状程度にとどまると、輸送人員は約1割減少する。既存の路線網やサービス水準の維持がさらに厳しくなる。人員の維持や増加には新たな観光需要の喚起や、コンパクトな街づくりと連携した交通ネットワークの再構築などが不可欠になりそうだ。
需要推計は各自治体の人口ビジョンを基に、25年度の四国内人口が365万人(15年国勢調査では384万人)に落ち込む前提で試算した。鉄道、バス、旅客船を合わせた25年度の輸送人員について、14年度の1億2830万人を基に、外国人延べ宿泊者数の変化による増減をまとめた。
外国人延べ宿泊者数が14年度と同じ24万人、あるいは全国で2倍強に増えるのに連動して51万人になる場合でも、輸送人員は1億1300万~1億1507万人にとどまった。約10年で1割減る見通しだ。外国人延べ宿泊者数が270万人にまで伸びれば、輸送人員は3%増える見通しだ。
四国運輸局は「(1割減の)2パターンがより現実的」と厳しい見方を示した。事業者は路線の統廃合など経営改善を迫られる可能性がある。
ただ、四国の外国人延べ宿泊者数は昨年、6割増で過去最高を更新。今回の試算では日本人延べ宿泊者数は横ばいとしたため、国内外を問わず新たな観光需要を喚起すれば減少ペースの緩和が期待できるという。
同時に、高齢化の進行により車から公共交通への需要増も想定される。四国はバス停から500メートル圏外など公共交通空白地域の人口が13%と、全国でも突出している。同運輸局はコンパクトシティ化と合わせた生活の足の確保、コミュニティバスやデマンド型交通の有効活用によって利用者の確保が必要と指摘した。
経営面でも公設民営や国の支援など官民の役割分担が重要だとした。ニーズがありながら導入が進まないICカードの利用エリア拡大など、地域一体となった推進策が急務だとした。
将来の需要減をにらみ、事業者も対応を始めている。四国旅客鉄道(JR四国)は通勤・通学利用が細る中、2年前に食事付きの観光列車「伊予灘ものがたり」を導入。インバウンドを取り込み乗車率約9割を確保している。来春には新観光列車を投入し、各地の博覧会と連動したラッピング列車も運行する。
ことでんバス(高松市)は高松空港と高松市街地を結ぶ空港リムジンバスに、2月から公衆無線LAN「Wi―Fi」を備えた。「訪日客の増加に対応した」(同社)といい、各乗り場に空港を示すピクト表示も始めた。2次交通の充実では、徳島・祖谷地区のバス試験運行がある。
四国運輸局は「公共交通の維持・確保へ、自治体や事業者との連携を密にして、取り組みを進めたい」としている。