倒壊した家屋に取り残された人を救助する消防と警察の救助隊=15日午前3時37分、熊本県益城町、上田幸一撮影
暗闇の中、民家が光に照らされ、重機の音が響く。震度7を観測し、被害が特に大きい益城(ましき)町では、警察や消防、自衛隊による懸命の救出作業が進められた。
熊本で震度7 これまでの経過を時系列で
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同町安永の木造2階建て民家。地元消防によると、地震発生直後、1階がつぶれ、寝室で母親と寝ていた生後8カ月の女児が閉じ込められた。たびたび襲ってくる余震のため、救出作業は難航したという。
15日午前3時45分ごろ、民家から女児が救出された。毛布にくるまれ、救急隊員の腕の中に、しっかりと抱きかかえられている。
「やったー」「よかったー」。周囲の消防隊員らから拍手と歓声が上がった。
消防によると、母親は自力で脱出できたものの、女児が屋内に取り残された。このため、屋根にドリルで穴を開け、そこから入った隊員が手作業で障害物を取り除いた。5分ほど作業をしては家屋の外に出て、余震がこないか様子を見ては再び作業を始める、という繰り返しだったという。
女児が救出されたのは、地震発生から約6時間後。はりなどの隙間でできた空間にいたため、頭部の打撲がある以外は目立ったけがはなく、命に別条はないという。
■数十人態勢で
「お母さん――」。同町馬水では午前0時過ぎ、2階建て住宅の前で若い女性が叫び続けていた。閉じ込められた50代の母親を助けようと、消防隊員数人が家屋にはしごをかけるなどしたが、救出作業は難航しているようだった。
1時間近くたって機材が到着。自衛隊や警察も集まり、数十人態勢で救出にあたった。
やがて、女性が泣き叫ぶ声が響いた。
「お母さん、置いていかんでよ。なんで死ぬとね。なんでお母さんだけ……」
午前4時過ぎ、母親は運び出された。
同町寺迫では、逃げ遅れ、倒壊した木造家屋に閉じ込められた一人暮らしの高齢女性を救出するため、警察官らが救助活動を続けた。光で照らされた一軒家を、近所の人たちが心配そうに見つめる。余震の度に笛が吹かれ、作業は中断した。重機が家屋のがれきを運び出した。
救助隊はチェーンソーで家屋の柱などを切っていった。高齢女性とみられる住民が冷たくなって見つかったのは午前5時すぎだった。