今の中学校の部活動で期待・重視するものは
さあ、中学校の部活動です。義務教育の中、スポーツや文化に親しむ場です。楽しい思い出、苦しい記憶、割り切れない思い。朝日新聞デジタルのアンケートに中学生や親、家族、教員、それ以外の方々から声が集まっています。まずは中学生の声と、改善してほしい点として多くの人が挙げた「活動時間」に関する声を紹介します。
アンケート「中学校の部活動」
■雰囲気や指導に落差
部活動のアンケートに、当事者の中学生が答えてくれています。
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「部活はすごく楽しいです! 活動時間が短いと感じるので長くとってほしい気持ちはあります!」(三重県・女性)
「私は運動部に入っています。趣味の一環としてその部活のスポーツをやりたいと思っていますが、部は大会で上位に入るという目標を持っているため方向性に違いがあります。そのため、休みが少なく、6、7月ごろの平日の部活は7時近くまであります。家が遠い自分にとっては勉強もやらないといけないため、大変なところがある」(静岡県・女性)
「顧問が理不尽。顧問の発言が暴言と感じることが多く、精神的につらくなる」(東京都・男性)
「私は演劇部部員でした。もともとダンスが趣味でずっとそれを続けようと思っていました。しかしやってみると、顧問の先生に『演劇部は劇が本職ですよ』と言われてがっかりしました。それから嫌なことでも無理やり『私はこのことが好きだからやっているんだ』って思わないといけなくなり、中1の後半から自殺したいと思いました。本当に部活を楽しんでいる人は気持ちいいだろうなあ」(埼玉県・女性)
「先輩の中で、やる気のない人が2人いてその2人が原因で部全体の雰囲気が悪くなっている。しかし、その2人は他の先輩たちと日常的に仲良くしているため、誰もはっきり言えない。本当は私たち(同級生)は真面目にやってもっと技術やチームワークを上げていきたいのに、悪い雰囲気のせいで緩い部活動になってしまってる」(神奈川県・男性)
「僕は卓球部に所属しているのですが、僕以外に真面目にやっている人がいません。自分は毎日YouTubeなどで卓球の試合を見たり、卓球ノートを書き自分自身を分析したりしているのですが、他の部員はヤル気がない人が多いです。練習場に来てもみんなで固まっておしゃべりをしたりして、ラケットを握らなかったわとか言ってる人もいます。ヤル気がないのなら、部活に来ないで欲しいです。部内の雰囲気が悪くなってしまいます。また、顧問も初心者で部活にもろくに来ません。もっと熱心に部活をしてほしいです。そうでなければ、部活には来なくていいです」(福岡県・男性)
「楽しくやっているのですが、顧問の先生はいても指導者がいないために自己流になっているのが、少し不満なところです」(新潟県・男性)
「部の中で仲間外れにしたり、パシリにしたりなどがあるが指導者が改善する行動をなかなか取らない」(神奈川県・男性)
「私は週2回だけ活動する文化部に所属している。部活だけに時間を制限されず、新聞を読んだり習い事をしたりと学校以外のことも充実させることができている。しかし他の部活はたいてい、ほぼ毎日活動があるため学校外の活動や休息に割ける時間は少ない。そのため、部活に偏りがちになっている人が多い。だから、活動時間をもっと短くして、部活以外のことにも取り組めるようにしていく方が、物事を考える視野が広がると思う」(千葉県・女性)
■活動時間への意見は
改善してほしい点を尋ねた質問に「活動時間」を多くの方が選んでいます。意見の一部を紹介します。
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●「顧問の先生は大変熱心で休日も指導してくださいます。ありがたい半面、あまりにも熱心すぎて生徒にも部活動の出席を強要することがあります。今の子供たちは学校、部活動、学習塾等、とても忙しいです。なぜか部活動を休んで塾に通うことは許されていません。ですから、週に2日ほど部活動が終わってフラフラの状態で10時30分まで勉強し12時ごろの就寝となります。朝7時から夜12時までアイドル並みのスケジュールなのです。過労死レベルです。どこを修正すればよいですか?」(大阪府・40代女性・中学生の親)
●「部活顧問の仕事は教員の生活をむしばんでいます。経験もないスポーツに若手だからと駆り出され、平日の授業準備、学級経営(こちらが本当に大きく重要な仕事であるはずです)でへとへとになったあと土日が潰れます。仕事の延長ならまだ耐えられますが知らないスポーツを外に立ってずっと見ているのです。ではそのスポーツを学べという人がいますが、その時間は授業に関する研鑽(けんさん)、生徒の心のケアに関する勉強に使わせてもらえないのでしょうか。そして給与は1日駆り出されて何千円です。疲れたまま月曜のホームルームを迎えます」(東京都・20代女性・教員)
●「中学3年生の母です。友達や先生にも恵まれ、親子ともども楽しく活動しています。ただ、平日の帰宅時間が遅い(20時過ぎもザラ)のだけは塾通いや犯罪の面でも色々思うことはあります」(福岡県・40代女性・中学生の親)
●「中学生の時に、卓球部に所属していた。当時の卓球部は活動が週2回しかなく、毎日活動している他の運動部と比べて不満があった。顧問やコーチに直談判して外での基礎体力訓練の活動日を作ったり、土日の練習日を増やしてもらったりした。自分たちが動いた結果、後輩たちの代も今までよりも充実した部活動が送れるようになり、他の運動部に対しての引け目も感じることはなくなった」(大阪府・20代男性・それ以外)
●「子供が文句を言わずにしていることですが、親としては家族旅行の計画も立てられず、正直もう少し休日がほしいと思っています(夏休みなどで欠席すると、欠席日数によってランキングを下げられてしまったことがあり、子供が休みたがらなくなりました)」(兵庫県・30代男性・中学生の親)
●「娘が中学校バスケットボール部に所属しています。丸1日の休みは無いことが多く、日曜はほとんど試合。多感で頭の柔軟な時期に、公立の学校がここまで生徒(先生も)を拘束すること、週7日、同じ人の指導を受け続けることは、子どもが色々なことや人に出会う機会を奪うものであり、大変違和感を感じています」(東京都・40代女性・中学生の親)
●「吹奏楽部だがとにかく忙しい。土日も弁当を持って一日中部活に行く。体を休ませる時間がない。成績も下がる」(東京都・30代女性・中学生の親)
●「活動時間が短すぎる。強豪校は活動時間が長く、合宿もあり、内容が充実している。同じ義務教育なのに、それぞれ学校によって活動時間、規則、内容にばらつきがあるのはおかしいと思う」(宮城県・30代女性・中学生の親)
■運動部への加入率6割超
中学校の運動部は、若い世代のスポーツ活動を支え続けてきました。
国公立・私立中の主要19競技の運動部を統括する日本中学校体育連盟が、中学生の運動部加入率を出しています。データをとり始めた2001年度は、男女合わせて65.9%(男子75.7%、女子55.6%)でした。15年度は63.4%(男子73.2%、女子53.1%)。サッカーを中心に学校外の地域クラブが増えた今も、存在感は変わりません。
競技別に15年度の加入率をみると、男子は1位がサッカー(13.36%)で、以下②軟式野球(11.37%)③バスケットボール(10.03%)④ソフトテニス(9.96%)⑤卓球(8.21%)の順。01年度は軟式野球がトップでしたが、サッカーと入れ替わっています。
女子は①ソフトテニス(11.35%)②バレーボール(9.32%)③バスケットボール(8.06%)④卓球(5.73%)⑤陸上競技(5.58%)で、01年度とは5位がバドミントンと代わりました。
文化部に関しては、国立青少年教育振興機構の調査があります。13年に全国の公立中学校2年生約4500人を対象に調べたところ、20.5%が所属していました。
現在の学習指導要領で、部活動は教育課程の外に位置づけられます。生徒が自主的、自発的に参加するもので、学習意欲の向上や責任感、連帯感を育てることに役立つとされます。その活動内容や競技成績は、高校入試の内申書に反映されることもあります。
一方で、運動部や音楽系の文化部では、好成績を求めるあまり、活動時間の長さやオーバートレーニング、学習への支障などが問題視されてきました。
教員の負担の重さも指摘されてきました。部活動指導は勤務時間外です。競技経験がなく、指導法を知らないまま顧問を任される例も少なくありません。今は地域から専門的に指導できる人を招く例も多くなり、全国で約3万人います。昨年には中央教育審議会が、外部指導者が休日の試合など学校外への引率もできる制度を答申しました。
さらに総合型地域スポーツクラブが部の練習指導の一部を担うなど、学校の枠を超えた部活動の形を地域と模索する動きもあります。(編集委員・中小路徹)
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