搾乳される牛たち=17日午後7時18分、熊本県阿蘇市の阿部牧場、田内康介撮影
地震は、地域の特産品にも大きな被害をもたらしている。
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「ASOMILK(アソミルク)」のブランド名で低温殺菌牛乳を製造・出荷している熊本県阿蘇市三久保の阿部牧場では、未明に「本震」が起きた16日から、1日約6トンの生乳を搾っては捨てた。断水で、生乳を集めるパイプや製造装置などを洗う水が確保できないためだ。停電で搾乳機も使えないが、毎日搾乳しないと乳牛は乳房炎を起こすので、自家発電機を使い搾乳を続けている。阿部寛樹社長(39)は「ミルクは一滴も捨てたくないが、泣く泣く廃棄している。電源の燃料確保など不安もある」と話す。
県畜産課によると、県内の酪農家は2015年2月現在、631戸。飼養頭数約4万5千頭は北海道、栃木に次ぎ全国3位。生乳生産量(14年度)は24万7千トンで、西日本1位だ。
生乳は通常、酪農家から専門業者が乳業工場に運び、牛乳や乳製品になって消費者に渡る。だが、阿蘇地方では道路が通れなくなったり、ガソリンが不足したりしていて、酪農家から生乳を集められない状況だという。
生乳は専用のクーラーで温度を1度に保つ必要があるが、県内にある4乳業工場も被災して一時、操業を停止。県酪農業協同組合連合会は、自分で貯蔵できない分は自主廃棄するよう16日付で要請した。担当者は「未曽有の事態を受けた苦渋の選択だった」と話す。
17日から一部で生乳の集荷を再開したが、道路の寸断や停電は続いている。県畜産課は「乳業工場が稼働したとしても、生乳を集めるためのインフラを整えるのにはかなり時間がかかりそうだ」としている。