体をほぐすため、避難所でラジオ体操をする人たち=19日午前6時35分、熊本県益城町、福岡亜純撮影
熊本県の被災地で、車中泊が原因とみられる肺塞栓(そくせん)症(エコノミークラス症候群)と診断される人が相次いでいる。公共施設や自宅近くに止めた車の中で寝泊まりする被災者は多く、関係機関は危機感を募らせる。
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エコノミー症候群で女性死亡 車中泊、外に出て倒れる
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「極めて異常な事態」。済生会熊本病院(熊本市)の中尾浩一副院長によると、17、18日に10人がエコノミークラス症候群で入院した。同様の症状で入院した昨年1年間の患者数は40人だったといい、中尾副院長は「昨年1年の4分の1の患者が2日間で入院した。非常に危機感を持っている」と話した。
熊本市の江南中学校の校庭には18日夜、約150台の車が並んだ。無職の米田一夫さん(73)は3日続けて軽自動車の運転席で寝泊まりしている。眠りは浅く、起きると節々に痛みを感じる。断水が続いたため、水分摂取を控えるようにしているという。「体に悪いとわかっていても、人の多い体育館で寝るよりまし」と話す。
熊本県益城町の避難所になっている大型展示場「グランメッセ熊本」は2200台収容の駐車場が満杯状態だ。避難者は車中泊をしている。
同町に住む女性(80)は息子夫婦、孫と計3台の車に分乗して寝泊まりしている。施設内に仮設トイレは1カ所だけ。歩数計を持つ女性は「トイレとの往復だけで、3千歩も歩く」。トイレの回数を減らすため、水分をとるのを控えているという。「車で足は伸ばせない。本当は家で寝たかったけど、息子に『家がつぶれる』と連れてこられた。自分ばかりわがままをするわけにはいかない」と話した。
熊本赤十字病院(熊本市)の岡村直樹医師(40)は「今と同じ避難状況が長引けば、それだけ患者は増加するだろう。トイレに行く回数を減らしたい人もいるだろうが、水分はこまめにしっかりとってほしい」と話す。
同病院では、早ければ20日以降、県外からの応援医師や看護師、事務員を避難所に派遣する。避難者を問診し、エコノミークラス症候群が疑われる場合は病院での検査を促す予定だ。
約520人が避難する熊本県南阿蘇村の南阿蘇中学校体育館では19日朝、医療法人徳洲会のスタッフや地元の中学生が住民らの前で、エコノミークラス症候群を予防するための体操を披露した。足の指を動かす▽もも上げを繰り返す▽腕を上げ下げする――。それぞれ10回ずつ繰り返した。松原徳洲会病院(大阪府松原市)の看護師、大西美由紀さんは「今後は車中泊をしている避難者にも参加を呼び掛けていきたい」と話す。