一般財団法人国際貿易投資研究所(ITI)首席エコノミストの江原規由氏
2020年の中国両会(全国人民代表大会・全国人民政治協商会議)の開幕を間近に控え、新型コロナウイルス感染症対策期間という特殊な時期に行われる両会は、日本の各分野の専門家や学者から広く注目されている。中国が世界の感染予防・抑制において成し遂げた誰もが認める成果や、中国のさらなる経済発展などについて、人民網の日本駐在記者が一般財団法人国際貿易投資研究所(ITI)首席エコノミストの江原規由氏にインタビューした。人民網が伝えた。
中国の質の高い発展は注目と期待に値する
新型コロナウイルス感染症の蔓延により世界各国の経済が停滞した。江原氏は、「中国は世界経済の成長に最も貢献している」としたうえで、「現在、中国経済はいち早く回復基調に転じつつあり、その最大の要因の一つは、中国の『六穏(六つの安定工作)』と『六保(六つの保障)任務』によるところが少なくない」と指摘した。さらに江原氏は、「『六穏工作』と『六保任務』は中国が目指す質の高い発展の方向性を体現していると言える。このことは、改革開放で高成長を遂げてきた中国経済が持続可能な成長パターンへと転換しつつあることを物語っている。その進捗は積極財政政策、穏健金融政策の今後の展開を含め、両会での主要課題の一つとなろう。質の高い発展(供給サイド改革などを含む)で注目すべきは、中国の貧困対策の進展と今年達成予定の小康社会の実現だ」と述べた。
すでに貧困減少効果を上げた「中国の奇跡」
中国の貧困脱却政策と小康社会(ややゆとりのある社会)の全面な完成について、江原氏は長年の観察研究を通して、客観的な見解を持っている。江原氏は、今年は中国の貧困脱却政策の進展と貧困脱却の難関突破の成否を決める年だとし、「改革開放の40年間に中国は8.5億人の貧困を減少させており、世界の貧困減少史における『中国の奇跡』といっても過言ではない。その経験は2030年が目標年の国連の持続可能な開発目標(SDGs)の実現への示唆となるに違いない。また、2019年、中国のGDPは100兆元台(1人当たり平均:1万ドル超)に迫っており、人民生活は多彩かつ豊かになりつつあることなどから、小康社会の全面的な完成は近づいていると考えられる」と述べた。江原氏は、「この点についても両会での議論が注目される」とした。
中国のデジタル経済化発展など新インフラ建設に期待
江原氏は、「両会では、総じて、新型コロナウイルスの危機をいかに機会(チャンス)につなげるかが主要テーマの一つとなると考えられる。この点、中国は、新型コロナウイルス後遺症解消の一環として改革開放の拡大・深化を図るとしている。対中ビジネス環境の一段の整備、自由貿易地域(FTZ)の機能向上など新時代の対外経済関係をどう構築しようとしているのか海外の関心には高いものがある」と指摘した。江原氏は長期にわたって中日経済貿易関係について研究しており、両国関係について、「東アジア地域包括的経済連携(RCEP)、日中韓自由貿易協定(FTA)の構築、さらに、第三国市場協力(特に『一帯一路』)の行方などが指摘できるが、これが、どれほど議論の対象となるか注目したい」と述べた。