ビールの税金は比較的高い
長野県佐久市の地ビールメーカー、ヤッホーブルーイングの工場では、黄緑色の缶が勢いよく製造ラインを流れていた。コンビニ大手ローソンで定番商品となった「僕ビール、君ビール。」シリーズから、26日に数量限定で売り出す「よりみち」の缶詰め工程だ。
「このビールは若者向け。若者から見ると日本の従来のビールはおじさんの飲み物。これまでのままではビールを飲まない人が増える一方です」
「インドの青鬼」「水曜日のネコ」など、ユニークな商品名や個性的な味わいの地ビールをヒットさせてきたヤッホーの井手直行社長が、次の「追い風」と感じているのがビールにかかる酒税を減税する動きだ。
政府・与党内では、ビールの酒税(350ミリリットル缶あたり77円)を引き下げる一方、発泡酒(同47円)や第3のビール(同28円)を増税し、ビール類の酒税を一本化する方向で税制改正が検討されている。
実現すれば、「ビールの味に近くて安い酒」をめざす競争よりも、ビールそのものの味で勝負する競争が活発になると、井手社長は予測する。ビール類市場のうち地ビールのシェアはまだ約1%だが、「3、4年で3%になる」とみる。
小規模でも味や製法にこだわる「クラフトビール」は最近人気で、キリンビールの推計では消費量が2014年の2万4千キロリットルから15年には4万キロリットルに増えた。今年はさらに2割増えるという。大手ビールメーカーがクラフトビールブームに関心を寄せるのも、一連の税制改正をにらんだ動きとみられている。
キリンビールとサッポロビールは15年にクラフトビールの子会社を作ったほか、キリンは14年、ヤッホーに出資し、主力ビール「よなよな」の生産を受託している。
佐久市にある別の地ビールメーカー、軽井沢ブルワリーの「THE軽井沢ビール」の缶には小さく「Asahi」と書かれていた。アサヒビールが6月10日に発売する今年の中元向けギフトセットで、「スーパードライ」と地ビールの詰め合わせを売り出すためだ。
和田泰治社長は「偶然ですが、ちょうど創業3年目の記念日に発売になるのは感慨深い。アサヒが我が社のビールを選んでくれたのは、大手と遜色のない工場設備が評価された結果」と胸を張る。同社にもビール減税は追い風で、来年夏をめどに製造能力を現在の2・5倍にしたい考えだ。