シャープが試作した有機ELの画面=堺市堺区
薄さや高画質が売りのディスプレー「有機EL」が再び脚光を浴びている。液晶に押され、日本の電機大手は一時ほぼ撤退したが、最近は韓国勢がスマートフォンやテレビで採用を拡大している。日本勢では素材メーカーが韓国勢と組んで生産拡大を図り、電機大手も再び力を入れ始めた。
北朝鮮との軍事境界線に近い、韓国北部の坡州市。工業団地の一角に、有機ELを発光させる材料をつくる出光興産の工場がある。同社の素材は青色の発光に強みを持ち、韓国の電機大手・LGグループの大型有機ELテレビに使われる。
出光は2012年末、静岡県に次ぐ拠点として生産を始めて、15年に年間の生産能力を2倍以上に拡大した。出光は09年以降、LGと有機ELの技術開発で提携し、同じ坡州市内にLGの工場もある。「お互い日常的に行き来し、密に会話しながら性能の向上に生かしている」(出光韓国法人幹部)という。
出光は15年には同じ有機EL材料を手がける韓国メーカーと特許や製造拠点の相互利用で合意した。上海事務所も設けて中国メーカーへの売り込みを進める。
「出遅れないように一生懸命ブラッシュアップしている」。出光と並び、発光材料を長く手がけてきた住友化学の十倉雅和社長は今年3月、18年度までの3年間の経営計画を出した記者会見で語った。
韓国の工場に約200億円を投じ、有機ELのタッチセンサーパネルの生産能力を4割増やす。顧客は韓国勢で、テレビ開発にも協力する。今後の情報電子化学部門の売り上げの伸びの大部分は有機ELが占める見通しだ。