ボボジョン・カラボエフさん=5月、中川仁樹撮影
過激派組織「イスラム国」(IS)の戦闘員だったタジキスタン人の男性が朝日新聞記者の取材に応じた。若者は出稼ぎ先のロシアの経済が悪化する中で、誘い出された。彼が語ったのは、仲間が消耗品のように殺されていく狂気の光景だった。
マックに身を寄せる出稼ぎ労働者 周辺で戦闘員を勧誘か
特集:IS(「イスラム国」)
「旅行に行き、仕事も見つかればいいと思った」。ボボジョン・カラボエフさん(30)は、シリアに向かった経緯をぽつりぽつりと話し始めた。
イスラム教徒が多いタジキスタンの首都ドゥシャンベ郊外出身。軍事学校を中退後、2006年からモスクワで働いた。建設作業員とタクシー運転手を掛け持ちし、多い月は約3千ドル(約32万円)を稼いだ。
だがロシア経済が悪化。15年、賃金不払いに見舞われた。落ち込んでいた時、建設現場で「ハリド」と名乗る同胞と知り合った。
ハリドは「ここよりISでの生活の方がいい」と繰り返した。IS支配地域は平穏だとし、「工場建設」や「道路舗装」の様子のビデオを見せた。「シリアに住むタジキスタン人」とも電話で話させ、「まずは旅行に行き、気に入れば働けばいい」と提案した。
シリアの知識は何もなかったが、昼夜問わず誘われるうち、5日後には行こうと決めた。いまにして思えば、ハリドはISに若者を送り込む勧誘員だった。