新鮮な旬の野菜などが並び、生産者と買い物客が話しながら売り買いする朝市村の販売会場=名古屋市東区のオアシス21、小川智撮影
毎週土曜の朝、名古屋の中心街・栄に、朝市が立つ。「オアシス21オーガニックファーマーズ朝市村」。農薬や化学肥料を使わない旬の野菜ばかりが並ぶ全国でも珍しい朝市で、今年、日本農業賞「食の架け橋の部」の大賞を受賞した。3時間限定で千人超を集める人気の秘密は何か。
■熱気はバーゲンさながら
午前8時半、オアシス21の広場(名古屋市東区)にカランカラン、ベルの音がこだまする。待ち構えていた買い物客が一斉にレタスへ、新タマネギへと手を伸ばす。朝市の始まりだ。
熱気はバーゲンさながら。この日、朝一番で人垣ができたのは、鮮やかなだいだい色の甘夏やオレンジを並べた静岡県浜松市の外山農園だった。人垣の後ろから次々に人が押し寄せる。女性客から農園主へ質問が飛ぶ。「次はいついらっしゃるの?」「来週は来られないから、1カ月後くらいかな」
出店するのは、化学肥料や農薬を使わない農家ばかり。果樹など、使用が避けられない場合は明示する決まりだ。毎週、東海各地の20~35の農家が自分の田畑から、とれたてを持って集まる。今日出店した農家が来週いるとは限らない。お目当てを見つけたらすぐ手に入れるのが鉄則。その限定感が熱気を生み出す。
東区の主婦斉藤幸枝さん(71)は「ここに来ると、いま何が旬かわかるのよ。味が濃いし、無農薬で安心。里芋やジャガイモは皮まで煮出してスープにするの」。
プロの姿も見えた。キャベツや卵を買い込んでいたのは、池下のイタリア料理店「イル・ヴェッキオ・モリーノ」のオーナーシェフ森清貴さん(50)だった。「新鮮なのが一番。ナチュラルな味なので、料理のしがいがあります」。1年ほど前から通う。