パリ発カイロ行きのエジプト航空機が地中海上空で消息を絶った。高度1万1千メートルを飛行中に突然、レーダーから機影が消えるという不可解な事態。機体トラブルなどの事故なのか、テロなのか。エジプト当局はあらゆる事態を想定し、調査を続けている。
エジプト航空機、消息絶つ パリ発カイロ行き
「機体の問題なのか、テロ攻撃なのか、あらゆる可能性を排除しない」。エジプトのイスマイル首相は19日午前、カイロ国際空港で報道陣に語った。
空港のそばにあるエジプト航空の建物前は、報道陣50人以上が集まり騒然としていた。乗客や乗務員の家族らが不安そうな様子で建物に出入りしていた。
娘が乗務員としてエジプト航空804便に乗っていたという女性は、「最後に娘と話したのは昨夜。エジプト航空や当局からは何の情報もなく、どうなっているのか全くわからない」と疲れ切っていた。
親族4人がフランス旅行から帰国するために乗っていたという男性は「当局の説明では海に墜落し、おそらく技術的な問題ということだった」と話した。
同機は高度1万1千メートルを飛行中、突然、消息を絶った。理由は不明で、謎は深まる。
ロイター通信などが伝えたギリシャの民間航空当局の発表によると、同機はエジプト時間19日午前1時24分(日本時間同日午前8時24分)にギリシャの飛行情報区に入った。ギリシャ本土に近いケア島上空を通過した際は操縦士から問題の報告はなかったという。
その後、エジプトの飛行情報区へ移る直前の午前2時27分(エジプト時間)に管制官が再度交信を試みたが、返答はなかったという。ギリシャの飛行情報区を出て間もなく、機影がレーダーから消えた。ギリシャ東南カルパトス島沖約200キロで、商船が上空で炎を目撃したとの情報もある。同機は遭難信号を発信したとの情報もあるが、エジプト軍は否定している。
日本航空元機長の小林宏之さんは「高度1万1千メートルで飛行記録が途絶えるのは不自然だ」という。
2015年3月に独ジャーマンウィングス機の副操縦士が仏南東部に機体を墜落させた事故では、(航空機の飛行データをネット上で提供する)フライトレーダー24による記録が墜落直前まであった。今回は上空で途絶えており、小林さんは「一瞬で電源が切れたことを示している。爆破されたか電源系統にトラブルがあった可能性がある」と話す。
エジプト航空によると、同機は消息を絶つ前の24時間でカイロ―チュニス間を往復した後、カイロからパリまで飛んだ。これまでの1週間ではブリュッセル、イスタンブール、アブダビ、アテネ、ルクソール、アレクサンドリア、カサブランカなど、アフリカ、中東、欧州の路線を中心に運航していた。(疋田多揚、カイロ=高野裕介、ローマ=山尾有紀恵)