広島の原爆ドームの前に立つ中沢啓治さん(2006年撮影)
「まさか大統領が来るとは思ってもいなかったでしょう」。27日に迫った米国のオバマ大統領の広島訪問を受け、亡き夫の心境をこう推し量る女性がいる。原爆漫画「はだしのゲン」の作者・中沢啓治さん(2012年に73歳で死去)の妻ミサヨさん(73)だ。原爆投下後の惨状を知り、大統領を辞めた後も「核なき世界」の実現に努めると約束してほしいと願っている。
特集:オバマ米大統領、広島へ
特集:核といのちを考える
米国が広島に投下した原爆で父、姉、弟を奪われた中沢さん。原爆の漫画を描き始めたきっかけは、ともに被爆した実母が1966年に亡くなったことだった。火葬すると、白い粉しか残らなかった。「原爆の放射能は骨までとっていくんか」「アメリカが原爆でなん十万人の人間を地獄のように苦しめて殺す権利がどこにあるんじゃ」。主人公のゲンのせりふに、原爆への憤りを込めた。
被爆50年の95年、中沢さんは原爆特集のテレビ番組の取材で訪米。ワシントンのスミソニアン航空宇宙博物館で広島に原爆を投下したB29爆撃機「エノラ・ゲイ」を見て、「広島にとっては地獄の使者だ。こんなものを飾ってからに。米国は広島のことを分かっていない」と語ったという。