警察署や拘置所に勾留中、糖尿病の適切な治療を受けられずに失明したとして、愛知県内の40代男性が県や国を相手取り、約6898万円の損害賠償を求めた裁判の控訴審で、名古屋高裁(藤山雅行裁判長)は25日、原告敗訴の一審判決を一部変更し、県に約5097万円の支払いを命じる判決を言い渡した。国への請求は棄却した。
一審・名古屋地裁は昨年3月、原告の請求を退けていた。控訴審判決によると、窃盗容疑で逮捕された男性は2011年5月下旬、勾留中の愛知署で目の不調を訴え受診。医師から「糖尿病などの疑いがあり、失明の可能性がある。大きな病院で診てもらった方が良い」と説明されたが、付き添いの警察官が「緊急性がない」などと上司に説明。男性は名古屋拘置所に移された後の同年8月に左目を失明した。
警察が医師に書かせた診療簿には「さらなる精査加療が必要」と記載されていた。県は控訴審で「医師が失明の危険性を説明したという事実はない」と主張したが、藤山裁判長は「警察官は診察結果を正確に報告すべき注意義務を怠り、虚偽の説明をした」と認定し、県の責任を認めた。
県警の福島康朗・警務部監察官室長は「判決内容を検討した上、今後の対応を決めます」とのコメントを出した。