お年寄りと談笑する立松凜さん=島根県浜田市弥栄町木都賀の特別養護老人ホーム「弥栄苑」
母子家庭などひとり親世帯の移住支援に力を入れる地方自治体が増えている。都会の暮らしにくさに悩むひとり親に子育てしやすい環境を提供し、地方の人口減に歯止めをかけることなどが狙い。介護の場で働くことを条件にするなど、人手不足解消との一挙両得を期待する自治体もある。
■一時金30万円や養育費も支給
「おいしいですか」
島根県浜田市の山あいにある特別養護老人ホーム「弥栄苑(やさかえん)」。笑顔でカフェオレをお年寄りの口元に運ぶのは、昨秋職員になった立松凜(りん)さん(24)だ。
浜田市は昨年4月、介護事業所での就労などを条件に、全国に先がけてひとり親世帯の移住支援を始めた。転居費などの一時金30万円を支給。1年限定だが、家賃の半額、月3万円の養育費を支給し、15万円以上の月給も保証する。大阪府や愛知県の20~40代の母親4人と幼児から中学生までの子ども5人が昨秋、移住した。
名古屋市出身の立松さんもその一人。未婚で長女わこちゃん(2)を出産。保育所の空きがないため働けず、生活保護を受給した。
移住の決め手は、職場と保育所、診療所が隣で、空き家だった2DKの住居が徒歩10分と便利だったことだ。中古車も提供された。
弥栄苑では、食事の介護など生活全般を手助けする。入浴介助も3月から1人で担当。「お年寄りの笑顔を見るとやりがいを感じます」。施設長の岩田真美恵さんは「立松さんは貴重な戦力」と話す。ハローワーク浜田によると、介護の担い手は不足しており、3月末の有効求人倍率は2・7倍だった。