車中泊の避難者が多く集まる大型展示場「グランメッセ熊本」で、運営するツイッターのアカウント「熊本現地情報」を確認する米山凱一郎さん。ホワイトボードには、被災者にハッシュタグ「#熊本の声」をつけてつぶやくよう呼びかけるチラシを貼った=4月28日、熊本県益城町
震度7の激震に2度襲われた熊本県益城(ましき)町へ支援に駆け付けた3人の若者が、被災者の声を発信するツイッターのアカウントを立ち上げ、その後も支援を続けている。支援物資を被災者に、感謝の言葉を支援者に。すれちがいがちな双方の「情報の交差点」になろうと思い立った。
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熊本地震 災害時の生活情報
「全国の皆さん、微力な支援かもしれませんが熊本県産を買いましょう」。今月2日、震災の直後にできたツイッターのアカウント「熊本現地情報」が、こう呼びかけた。農林水産関連の被害が1千億円に上るとの報道を目にしたからだ。
イチゴ、トマト、スイカ。写真とともに「#熊本県産買ったよ」というハッシュタグ(検索ワード)をつけた投稿が相次いだ。「泣けてきた。みんなにありがとうございますって言いたい」といった感謝の言葉も寄せられた。
3人の若者は、2度の震度7に見舞われた益城町で「つながった」。
北九州市小倉北区でカフェを営む古川真也さん(21)は4月14日深夜、おにぎり100個と水30~40リットルを軽乗用車に積んで自宅を出発。フェイスブックで熊本に行くと投稿すると、中学の同級生の会社員冨田優(すぐる)さん(22)からメッセージが入った。冨田さんは長崎県佐々町の自宅から祖父母が住む益城町に向かっていた。
2年ぶりの再会。途中で合流した2人は、翌15日朝に益城町に着いた。「大量に持ってきた」と思っていた物資は、あっという間に配り尽くしてしまった。
古川さんは北九州市に戻った。その直後に、16日の本震。個人での物資支援に限界を感じた古川さんは、今度は自分の店で出すコーヒーを味わってもらおうと、再び現地に向かった。
早稲田大2年の米山凱一郎(がいいちろう)さん(19)は15日、神奈川県藤沢市の自宅を出発。ヒッチハイクで5台の車に乗せてもらい、水など約1万円分の物資を持って16日に益城町に入った。最後に乗せてくれたのが古川さんのカフェの常連客。ここでも縁がつながった。
3人は自分たちなりの支援の仕方を考え、出した結論が「情報を届けよう」だった。
避難所を回っていて、被災地ではその日に不足している物資の情報が、翌日には役立たなくなると感じた。SNSが有効だと考え、17日にツイッターのアカウント「熊本現地情報(@asahito_kuma)」を作った。
「益城町を中心に車でまわっています。少人数のため緊急の際すぐ対応可能です。下記の携帯にご連絡ください」
電話やツイッターのメッセージで、「SOS」が次々と来た。「毛布が足りない」と連絡を受けたら、ツイッターで「不足情報」として拡散。「持っている」という人から受け取り、車で被災者に届けた。
被災者の生の声に触れようと、「#熊本の声」「#大分の声」というハッシュタグをつけてつぶやくように呼びかけるチラシを避難所に貼った。「普通におしゃべりしてワイワイガヤガヤしたい。もう精神が疲れる」といったつぶやきもあふれた。フォロワーは約2週間で5千人を超えた。
3人はそれぞれの自宅に戻ったが、被災者の声を全国に広げたいとの思いは変わらないという。アカウントは続けるつもりだ。(太田成美)