日本で開発中の血友病の新薬について、奈良県立医科大や中外製薬(東京)などの研究チームが、臨床試験(治験)の結果の一部を26日付の米医学誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに発表した。従来の血液製剤が効きにくい患者にも高い効果が示されたという。
新薬は中外製薬が開発している。出血が止まりにくくなる血友病のうち、血液凝固因子の中の第8因子が少なかったり働かなかったりする血友病Aが対象。国内の患者は約5千人とされる。血液製剤で第8因子を補充する治療では、それを異物とみなして働きを妨げる「抗体」ができる人がおり、止血効果の低下が課題になっている。
研究チームによると、遺伝子組み換え技術を使い、第8因子と同様の働きをする物質を開発。抗体のある患者11人と抗体のない患者7人の日本人計18人(12~59歳)に週1回ずつ計12回注射したところ、補充療法などの時と比べて出血する回数が平均で約8割減った。全く出血しなかった患者も13人いて、うち8人は抗体のある患者だった。
この物質は第8因子と分子構造が異なるため、抗体の影響を受けないという。また、補充療法では週に3回ほど注射しなければならないが、週1回で済む可能性があるとしている。
奈良県立医科大の嶋緑倫(みどり)教授(小児血液学)は「患者の身体的、精神的な負担が軽減されることを期待している」と話す。
論文にしたのは、薬の承認申請に向けて少人数で安全性を確かめる第1段階の治験データ。中外製薬によると、治験はすでに最終段階に進んでおり、来年に承認を申請する予定という。この新薬は昨年、米食品医薬品局(FDA)から、開発促進を目的とした「画期的治療薬」に指定された。(黒田壮吉)