大阪府警は31日、府内で会社を経営する80代の女性が「財産を守るため」などと偽られ、計約5億7千万円をだまし取られたと発表した。警察庁によると、電話などで面識のない不特定多数をだます、オレオレ詐欺や架空請求詐欺など「特殊詐欺」での個人の被害額としては国内最高という。
府警捜査2課によると1月、女性宅に証券会社社員を名乗る男から電話があった。代理で株式を購入し、「あなた名義で製薬会社にお金を振り込んだ」とする趣旨だった。数日後、今度はその製薬会社の社員をかたる男が「あなたは名義を他人に貸しましたね。犯罪です」と電話。さらに数日後、金融庁職員と称する男が電話で「名義貸しがわかれば財産を没収される。管財人に預ければ財産は保護される」と話したという。
女性は男らの指示に従い、段ボール箱に入れるなどして宅配便で2月から今月上旬までに二十数回に分け、現金700万~4千万円を東京都など計十数カ所の集合住宅の個人あてに送った。女性は最近になって自分の会社の会計士に促され、府警に被害届を提出。「家族に迷惑がかかると思い現金を送ってしまった」と説明しているという。
警察庁によると、特殊詐欺ではこれまで、2011年に社債購入を持ちかけられた岩手県の70代男性(当時)が4億数千万円を詐取された事件が過去最高の被害額だった。昨年の全国の被害総額は約476億8千万円。6年ぶりに減少したが、捜査側の態勢強化で逮捕、書類送検した容疑者は前年比3割増の2552人で過去最多だった。