「所信表明演説でお話をしました」と報道陣の問いかけに答えず、マイクの前を通り過ぎる舛添要一東京都知事(中央)=1日午後1時44分、都庁、角野貴之撮影
東京都の舛添要一知事は1日に開会した都議会の所信表明で、政治資金の公私混同疑惑など一連の問題を陳謝し、元検事の弁護士2人による調査について「今議会での審議に間に合うように公表する」とめどを明らかにした。都議会の自民、公明など主要会派は「説明が不十分で納得できない」と反発を強めており、7日の代表質問、8日の一般質問で事実関係を追及する構えだ。会期は15日まで。
特集:舛添都知事の政治資金問題
舛添氏は所信表明25分のうち、およそ3分を問題への対応にあてた。高額との批判が高まっている海外出張費については、航空機のファーストクラスや宿泊時のスイートルームを使わず、経費縮減に取り組むと表明。公用車は「厳格な運用を徹底し、都民の皆様の疑惑を招かないようにする」と述べた。
舛添氏は相次ぐ疑惑に対し、これまでの定例会見などでは「(弁護士の)調査の結果を待ちたい」と述べるにとどめ、具体的な説明を避けてきた。一方、都議会には「誠実に答える」と述べていた。
有権者の関心は高く、この日の都議会は、190枚用意された傍聴券がすべて配布され、満員になった。先月31日までに都庁に寄せられた苦情や意見は約2万2700件にのぼっている。
■「怒られたから謝った感じ」「今日で潮目変わった」
「怒られたから謝った、という感じ。子どもの発言のようだ」
傍聴席で所信表明を聞いた東京都世田谷区の会社員巽(たつみ)一郎さん(55)はあきれた表情で話した。2年前の都知事選で、お金にクリーンなイメージから舛添氏に投票した。「何が悪かったという説明を聞きたかったが、もう信用はない。辞めてほしい」。渋谷区の自営業女性(52)も「淡々と原稿を読んでいて、謝る意思をまったく感じなかった」と憤る。
議席の約6割を占め、前回の知事選で舛添氏を全面支援した自民、公明からも不満が噴出。これまでの「静観」から一転、対決姿勢を見せ始めた。
「説明は納得できない。言語道断だ。厳しく追及する」。公明の長橋桂一幹事長は都議会後、強い言葉で舛添氏を批判した。
自民のベテラン都議は「今日で潮目が変わったかもしれない」と話す。会派内では議会後、「(所信表明は)謝罪になっていない。どうしようもない」という声が相次いだという。「リオデジャネイロ五輪を控えているうえ、次の知事候補を探す時間もない。いますぐ辞めさせるわけにはいかないが、こんな知事を擁立したことをわびる必要はあると思う」
背景には、有権者の批判の高まりがある。複数の自民、公明都議の事務所には「知事を辞めさせろ」「参院選では投票しない」などの電話が殺到。自身のホームページから舛添氏が写った写真を削除した都議もいるという。
ある公明都議は「ちゃんと説明してもらわないと支援者に説明がつかない。メディアの目が議会に移り、追及がぬるいと思われると自分たちが糾弾される」と危機感を募らせる。前知事の猪瀬直樹氏の選挙資金疑惑を追及する舞台となった総務委員会の集中審議の開催に、与党側からも前向きな声があがりつつある。