インタビューに答える前都知事の舛添要一氏=22日、東京・築地の朝日新聞社、相場郁朗撮影
政治資金や公用車の公私混同問題で批判が高まり、昨年6月に東京都知事を辞職した舛添要一氏が、著書「都知事失格」(小学館)の刊行を機に朝日新聞のインタビューに応じた。使途が不適切とされた政治資金の支出に相当する額や美術品の大半を寄付したとする一方、神奈川県湯河原町の別荘は売却していないことを明らかにした。
舛添氏「あの騒ぎは人民裁判」 退任から1年、語る
舛添氏が公に発言するのは、昨年6月15日の都議会での退任あいさつ以来。
舛添氏の政治資金の「公私混同」問題を調査した昨年6月の弁護士による報告書では、家族との私的な旅費、飲食費など計114万円分、趣味的色彩の強い美術品の購入費約315万円分を「違法ではないが不適切」と結論づけていた。
舛添氏は「不適切とされた支出に相当する額は福祉団体に寄付し、美術品の大半は複数の美術館に寄付した。ずさんな処理を改めて謝罪したい」と述べた。
ただ、正月に千葉県木更津市のスパホテルに家族で泊まった宿泊費を「会議費」として政治資金で処理していた問題で、会議に参加したと説明していた事務所関係者の名前は「検察の捜査対象になった。言いたいことはあるが差し控えたい」と明かさなかった。
また、「けじめ」として売却を約束していた湯河原の別荘は売っていないという。売却は当時の自民党都議から知事継続を前提に提案されたとして、「批判を受けるかもしれないが、知事を辞めて売る理由がなくなった」と説明した。
高額すぎると批判を受けた海外出張の際のファーストクラスやスイートルームは、「仕事の役に立てばいい」と述べ、使用は必要だったとの考えを示した。
都政を引き継いだ小池百合子知事に対しては「都議会自民党を敵にして人気を取るなど、劇場型政治になりすぎている。私は行政官に徹しようとしたが、小池さんは政治家。敵を作り続ける政治手法はいずれ行き詰まるのではないか」と指摘した。舛添氏時代に決まった2020年東京五輪・パラリンピックのボランティアの制服や迎賓施設再建計画の見直しについては疑問に思っているとし、「過去の知事をたたくのはいいけど、新しい政策をどんどん打ち出した方が良いのでは」と述べた。
7月に改選される都議会については「青島幸男さん、石原慎太郎さん、猪瀬直樹さんと続いた都政で、都議会の権力が異常に肥大化した。ただ、1300万人の代表としては勉強不足。都議選の結果がどうなるにしろ、行政と対抗するだけの能力がないといけない」などと話した。
知事辞職以降は自宅から出ることはほとんどなかったという。「政治資金問題は私のミス。五輪にも大変な迷惑をかけた。1年間蟄居(ちっきょ)謹慎し、かすみを食って生きてきたので、謹慎を解除させていただこうと。先は考えていないが、経験をもとに本を書いて、誰かの役に立てればと思っている」(小林恵士)