行方不明になっていた田野岡大和君が寝泊まりしていた宿泊施設の内部=3日午後、北海道鹿部町、遠藤啓生撮影
北海道七飯(ななえ)町の山中で5月28日から行方不明になっていた北海道北斗市の小学2年、田野岡大和(やまと)君(7)が6日ぶりに保護されたのは、捜索範囲外の約5キロ北東の陸上自衛隊駒ケ岳演習場(北海道鹿部(しかべ)町本別)だった。自衛隊や病院関係者への取材によると、大和君は自力でたどり着いた無人の宿泊施設で水を飲んで過ごし、発見時は少しやつれていたものの、しっかりしていたという。
3日朝、演習場は雨が降っていた。演習が一時中断となったため、午前7時50分ごろ、自衛隊員3人が普段は人がいない「廠舎(しょうしゃ)」と呼ばれる宿泊施設に入ると、驚いた様子の男の子が目の前に立っていた。
隊員は連日捜索が続いていたことは知っていた。隊員が「大和君?」と問いかけると、「うん」と答えた。続いて「おなかがすいているかい?」と聞くと、「うん」と言ったので、昼食用にコンビニエンスストアで購入してあった、サケとサケワカメのおにぎり2個とお茶を渡すと、勢いよく食べ始めたので、座って食べたらと促したという。
自身も6歳の息子がいる隊員が安心させようと、大和君に「お父さんもお母さんもみんな心配しているよ。もう怒ってないから今日は家に帰ろうね」と声をかけると、また「うん」と答えたという。
この施設にはマットレスがあり、外には水道の蛇口もあった。しかし、発電機がないと使えない暖房設備しかなく明かりもない。大和君が寒さで震え出したため、隊員が雨がっぱを着せた。
隊員が「1人で来たの?」と聞くと、「うん」とだけ答えた。「どこから来たの?」と聞くと、何も言わずに七飯町方面を指したという。
行方不明になった地点からこの施設まで、左右に曲がりくねった林道や林があるが、大和君がどうやって来たのかははっきりしていない。
大和君はドクターヘリで函館市の市立函館病院に運ばれ、6日ぶりに両親や姉と笑顔で再会。両手足に擦り傷があり軽い脱水、低体温症の状態だったため点滴を受けた。
大和君は5月28日、家族4人で鹿部町の公園を訪れ、午後5時ごろ、七飯町の山中で両親に車から降ろされた。5~10分後、父親が降ろした地点に戻ると、大和君はいなくなっていた。道警に通報後、父親は、公園で小石を人や車に投げた大和君をしつけるために置き去りにしたと打ち明けた。
道警や消防、陸自などが連日捜索にあたったが、行方不明現場から距離があったため演習場は捜索範囲に入っていなかったという。
大和君の父、貴之さん(44)は対面後に会見。「行きすぎた行動で息子に大変つらい思いをさせた。学校関係者や捜索にあたっていただいた皆様にご迷惑をかけました。深くおわび申し上げます」と語った。